ジャイアンのようなリーダーでは誰もついてこない

信頼の法則 ① 相手を大切にする

チームに100人メンバーがいれば百人百様、全員違う。それが価値観というものの正体です。なぜならば生まれも育ちも全員それぞれまったく違うから。価値観は違って当然。一緒のわけがありません。

そして大切なのは、価値観にたった1つの正解はない、ということです。リーダーの価値観が正しくメンバーのそれが間違っているわけではない。価値観はすべて正しいのです。

だからこそ、リーダーはメンバー一人ひとりの異なる価値観を大切にしなければなりません。

「俺流が正しいんだ」とばかりに自分の価値観をメンバーへ押しつける、ジャイアンのようなリーダーでは誰もついてきてはくれません。

同様にリーダーだけでなくメンバー同士も、互いが互いの価値観を大切に尊重する。そうすればメンバー間の信頼関係は飛躍的に高まることでしょう。

相手を大切にするためには、相手そのものを大切にするだけでは足りません。相手が大切にしているものを大切にするのです。

たとえば、夫が妻を大切にするだけでは足りません。妻が大切にしている義理のご両親や妻の価値観、趣味などを大切にするのです。

簡単なことではありませんがそれが相手を大切にする、ということ。

このような話を聴いたことがあります。

ある父親が長期休暇をとって小学生の息子と2人旅に出ました。そして、特定のプロ野球チームを追いかけて全国を旅しながら試合を観戦し続けたというのです。

たまたまスタジアムで隣に座った人が父親に言いました。「あなたはよほど野球が好きなのですね」と。

すると父親はこう言いました。「いいえ、私はまったく野球に興味がありません。息子が野球が大好きなのです」と。

相手の大切を大切にする、とはこのことです。

親子でするのも難しいこの行い。しかし、それを会社で実現できたなら、リーダーとメンバーの信頼関係は変わることでしょう。それがチーム運営の土台となっていくのです。

教えない振りをして気づきへと誘導する

信頼の法則 ② 自分を指さす

テレビドラマにもなった『下町ロケット』(池井戸 潤・小学館)のモデルになったのが、従業員わずか18名の町工場・植松電機です。

同社は世界に1つしかない技術でロケットづくりに貢献し、高い技術力を誇ります。

その社長である植松努氏はボランティアでロケット教室を開催し、年間1万人にのぼる子どもたちへ夢を与えている、ということです。

教室が終わると子どもたちが植松社長へ感謝の言葉を伝えます。

「教えてくれてありがとうございました!」そして必ずこう言うのです。

「あれれ? そういえば何も教えてもらっていないぞ……」

植松社長は答えます。

「みんな、自分の力でロケットをつくれたんだよ!」

種明かしをするならば、これ、実は植松社長は子どもたちに気づかれないようにこっそりと教えている、気づきを与えるファシリテーションをしているのです。

感嘆符が描かれた木製ブロック
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
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