「マネジメント力」だけでは改革は成功しない

日本の経営層はどちらかと言うと、前者のマネジメントタイプに偏りがちなように思います。しかしDXは、経営者がリーダーシップを発揮することが求められます。社員と同じ視点に立ち、意識を同じ方向に向け、全社一丸となって前進することが欠かせません。

そのためにも躊躇せず過去を破壊し、ビジョンを明確にして、新しい価値を創造することが求められます。自ら先頭に立ち、率先垂範で社内の改革に邁進する姿を見せることで、社員たちも一緒に動き出すのです。

決してマネジメントが必要ないと言っているわけではありません。大きな組織を動かすには、ときにマネジメントのような強制力が必要な場面も必ずあります。企業の経営者には、マネジメント力とリーダーシップ力の両方を使い分けられるバランスが必要なのです。

覚悟は言葉にし続けないと伝わらない

重要なことなのでくり返しますが、DXは、過去の成功体験を破壊して新しい価値を創造することです。これまで安定しているものや慣れ親しんだ仕事のやり方を破壊することは、経営者にとって非常に勇気のいることです。抵抗もあるでしょう。自分自身の過去を否定しているようにも感じられると思います。経営者は相当の覚悟を持って、自ら変革の先頭に立つことが求められます。

さらにDXは、経営者や一部の人間だけではなく、全社を巻き込む必要があります。全社員に変革を求めるものなのです。当然、社内の抵抗も大きくなることが予想されます。経営者が会社に変革を宣言したとしても、社内は必ずしも賛同者ばかりではありません。抵抗勢力が「今のままでも十分結果が出ているではないか」と言って、進むべき道を阻むでしょう。

面と向かって反対という人、反対とは言わなくても協力しない人、状況を傍観する人など、色々な人が出てきます。どんな状況であれ、経営者は、相応の覚悟を持ち、毅然とした態度を取り続けることが求められます。

とはいえ、覚悟は目に見えないものです。私は、クライアントの経営者に、覚悟を常に言葉にするよう推奨しています。経営者が、ことあるごとに変革の意識を言葉にし続けることは、本人が思っている以上に効果があります。私自身の経験やクライアント先での状況を見ていても、それは明らかです。会議で毎週、覚悟を言葉にしていると、最初は「トップが何か急に言い出した」と思われていても、3カ月後くらいには「本気なんだ」と、その覚悟が伝わります。