グーグルの核心的技術を生んだあるルール

さまざまな「モチベーション理論」をひとつにまとめたものを図表2に示します。実際には、こんなに明確に分類できませんし、異なるモチベーション理論を統一的に説明するのは困難です。研究者によって解釈の仕方も異なるのですが、ここではわかりやすく簡略化しました。

【図表2】モチベーション理論

図で示すように、「自己実現」や「自己超越」に目を向け、内発的・利他的モチベーションに基づきながら行動していくことがこれからの時代では大切です。実際にモチベーション3.0を活用した取り組みは、さまざまな企業でもなされています。

たとえば、モチベーション3.0の「自主性」を高めるため、グーグルが導入している事例に「20パーセント・ルール」があります。これは、「労働時間のうち少なくとも20パーセントを、すぐに見返りを得られる見込みはなくても、将来大きなチャンスになるようなプロジェクトの取り組みに使う」というルールです。

実際、グーグルの多くの革新的技術、グーグルニュース(2002年)やGメール(2004年)などはこの20パーセント・ルールから生まれたといわれています。

なぜ無償でウィキペディアを執筆・編集するのか

モチベーション3.0の「目的」では、自分だけの欲求を満たす利己的なものではなく、社会や組織全体の成長などといった利他的なものを指します。一例として、ウィキペディアがあります。ウィキペディアは自分以外の事柄について自由に執筆・編集可能なオンライン百科事典ですが、執筆者に報酬はありません。

プログラミング言語のPython(パイソン)も同様です。Pythonのリリースはすべてオープンソースであり、1991年のリリース以来、誰もが無料で使用、開発できるようになっています。開発したツールはインターネット上にライブラリとして提供されており、開発者が報酬を受け取ることは基本的にはありません。

無報酬でも無料で新しいコードを手に入れたり、自分のコードが正しいかをプロに確かめてもらったりできるため、個人としても社会としてもお金以上のメリットがあります。結果として次々と開発が進み、日々ものすごいスピードであらゆるシステムが改良、改善されています。