形容するより「素材」をそのまま使ったほうがいい

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「ものすごく寒い」

と書かれても、どのくらい寒いのか、実は読む側にはピンときません。では、こう書かれていたらどうでしょうか。

「温度計はマイナス3度を示していた」
「窓の外のツララは20センチにも達していた」
「一瞬で手がかじかむので手袋なしではいられない」
屋根からぶら下がっているつらら
写真=iStock.com/Valeria Vechterova
※写真はイメージです

どうでしょう。「ものすごく寒い」と書くよりも、「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」の「素材」をそのまま置いたほうが、よほど寒さが伝わるでしょう。

形容詞を使うよりも、「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」を書いたほうがいいのです。それだけで、読み手は「ああ、すごく寒いんだな」とわかるのです。「ものすごく寒い」と書くよりも、よほどはっきりと。

ビジネスでよく出てきそうな形容詞を考えてみましょう。それを、どう「素材」で表現できるか。

・工場が大きい
「面積は10万平米」
「東京ドーム10個分」
「完成する商品は1日10万個」

・デザインが美しい
「色とりどりの丸テーブルがずらりと配置されている」
「天井からは和をイメージした50センチほどの大きさの木製の照明器具が下がっている」
「デザインを担当したのは日本建築界の巨匠・隈研吾氏」

・オフィスが立派
「窓ガラスはすべて曲面になっており、向こうには東京タワーが見える」
「すべて白のテーブル、白の椅子、白の床に統一されている」
「エレベーターを降りて踏み込んだカーペットは3センチは沈んだ」

文章にしなければならない、となったとき、こうした「素材」にしっかり目を向けて、メモしておくことです。

難しいことではありません。たとえば驚いたなら、間違いなく驚いた理由があるはずなのです。それをしっかり見て、メモする。この「素材」が文章を作るのです。

「いい」「すごい」という形容詞の恐ろしさ

とりわけ「いい」「すごい」といった言葉には気をつける必要があります。なぜなら、日常的にあまりに簡単に使ってしまう言葉だから。

そして、しゃべるときには、実は表情だったり、身振り手振りだったり、いろいろな要素が加わってコミュニケーションをします。

したがって、こうした形容する言葉も、相手は総合的に受け止めることができる。

しかし、文章は文字だけなのです。「いい」「すごい」では、実はなんのことだかよくわからないのです。

「いい会社」「いい人」「いい取引先」「いい仕事」……。あるいは、「すごい会社」「すごく大きい」「すごく忙しい」「すごく難しい」……。

こうした言葉は、まず相手にはその「いい」や「すごい」が伝わらないと思ったほうがいい。これもまた、「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」という「素材」で表現すべきなのです。