不登校状態の児童が再び登校した事例に学ぼう

近年、子供の不登校が増え続けている理由についてさまざまな要因が言われ尽くされている感があるが、どれも推論でしかない。コロナの感染拡大にせよ、社会や家庭の変化にせよ、ある程度の合理性はあるが、それが直接的要因とは断定できない(ただし、増え続けている以上、相関性があることはほぼ間違いない)。

社会の要請における学校のあり方自体、完全に変わってきているのだから、不登校の在り方にも変化があって当然である。今は強制ではなく選択の時代であり、子供が「学校に行かない」という選択肢を親も認める傾向がある。だから、子供も不登校という選択肢を取りやすい。時代に沿った自然な流れかもしれない。

ただ、教師を悩ますのは、なぜ学校に来ないのか、と本人に聞いても明確な答えが返ってこないことだ。「学校に行かない」という世間からすると不合理な行為の理由を10歳前後の児童が明確に言語化するのは難しい。その答えは「何となく」であり、それが本音である。

そこで、不登校状態の児童が再び登校した事例を挙げよう。以下の例は、筆者が担任してきた児童の事例と、全国の教員仲間によって共有されたもの、それらを混ぜた事例である(個人が特定されないよう、情報を一部加工している)。

鉄棒に座る子供
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

●事例1 仲間の励ましで登校できたAさん(高学年男子)

Aさんは家庭的にしんどい中で育った。親は夜勤でほとんど面倒を見られず、昼夜が逆転しており、生活習慣全般が非常に乱れている。その影響で、朝は起きられず、登校できない日が何日も続いた。

担任は家庭訪問や親や本人との面談、朝に直接本人を起こしに部屋へ迎えに行くなど、あらゆる手を尽くしたが、その成果は全く芳しくない。

ある日、Aさんの登校を後押ししようと、担任及び学級の全員で、Aさんが起きているであろう午前中の半ばに本人の家に迎えにいった。もちろん、事前にAさんに了解を取った上で、である。Aさんはその日、嬉しそうに外に出て公園をクラスの仲間と散歩した後、みんなと一緒に登校した。その後も休む日は多かったものの、徐々に登校ができるようになってきた。

この事例で考えられる要因は、仲間である。担任が何をしてもダメだったのが、クラスの全員で行動したところ、変化が見られた。たとえ何日休もうとも、登校した際にクラスの仲間全員が自分を受け入れてくれるという土台があれば、子供は登校するという選択肢をとる可能性があることを示唆している。

逆に言えば、せっかく登校しても、周囲に受け入れられないと感じられる学級の状態であれば、その後も子供は「不登校」を選択し続ける可能性が高いと考えられる。