パンダ、実は友好国に贈られるとは限らない

――現在、パンダは中国が他国に「(研究目的で)レンタルする」という名目で提供されています。具体的なレンタルパンダの仕組みは書中の記述に譲るとして、私が気になるのはレンタル先です。近年、パンダをレンタルしたのはどこの国がありますか?

【家永】一番最近ですと、ワールドカップ開催を記念してカタールにレンタルされています。中東では初めての事例です。あとは2017年以降ですと、インドネシアやオランダ、ドイツ、フィンランド、デンマーク。また、かつて1950年代にも贈られたとはいえ、ロシアにも2019年にレンタルされています。

――意外と「ちゃんとした国」に行かせている印象です。てっきり、カンボジアやパキスタン、エチオピアあたりの友好国には片っ端から送り込んでいるのかと思っていました。

【家永】ここは大事なポイントです。現時点まで、中国のパンダ外交と一帯一路政策はそれほど連動しておらず、たとえばアフリカにはこれまで1匹も行っていません。旧ソ連圏でも、ロシア以外の国には行っていない。友好国であればどこにでも贈るわけでもないようなのです。

パンダは非常に維持費がかかる動物ですから、ある程度は豊かな国でなくては受け取れない。それはすなわち、お金を払ってパンダを動物園に見に来る市民がいたり、パンダグッズの市場があるような国ということです。

――ということは、従来は西側の国向けが多かったわけですね。

【家永】そうなんです。ただ、最近はインドネシアやカタールにもレンタルしていますから、ちょっと新しいパターンも生まれはじめています。従来と異なる国に対してパンダの価値を積極的に発信していこうという意思が見て取れる気がします。

カタール
写真=iStock.com/Mlenny
※写真はイメージです

パンダ、レンタルに100万ドルの寄付金がかかる

――レンタルパンダは、いくらかかるんでしょうか?

【家永】契約内容が公開されているわけではないので、報道レベルのことしかわかりませんが、まず基本的にはペアで100万ドルを中国側に寄付金として支払い、それから維持費がかかります。欧州や北米などの笹や竹が本来は自生していない地域の場合、中国から笹を空輸する場合もあります。当然、笹は受け入れ国側の買い取りです。この場合、ランニングコストでも中国側にお金が入る仕組みになりますね。