スイッチを押すだけで茶葉本来の味わい

CUZEN MATCHAが低いうなりを上げて動き出すと、ミルで挽かれた碾茶の粉(抹茶)が水を張っカップの中にふわふわと落ちてくる。カップの中にはマグネットが仕込まれていて、マグネットが回転することで抹茶を攪拌かくはんする。抹茶はダマになることなく、自動的に抹茶ドリンクが出来上がるという仕組みである。

抹茶は茶葉をまるごと食するため、茶殻などのゴミが出ず面倒な片付けもない。たしかに簡単だ。

碾茶の粉が回転するコップの水に落ちて混ざり、抹茶ドリンクが完成
撮影=プレジデントオンライン編集部
碾茶の粉が回転するカップの水に落ちて混ざり、抹茶ドリンクが完成

リーフは3種類あってそれぞれ味も値段も異なるが、おおむね一杯100円前後だから、カフェで飲むよりはるかに経済的。CUZEN MATCHAの反響は上々で、伊勢丹や高島屋など日本の一流デパートを中心に扱いが広がっている。

CUZEN MATCHA専用の抹茶リーフ3種。約20杯分で1700~3000円。
撮影=プレジデントオンライン編集部
CUZEN MATCHA専用の抹茶リーフ3種。約20杯分で1700~3000円。

「自分らしく生きたいな」と、人もうらやむキャリアを投げうってチャレンジをした塚田さんであるが、小さなマシンの横に立ってスイッチを入れる姿は、どことなく面はゆそうである。夢をかなえるという行為には、どこか人の心を童心に返す作用があるのかもしれないと思わずにはいられない。

未来の消費者は何を飲んでいるのか

「僕が、どこで起業家としてのユニークネスを立てていけるのかといったら、日本とアメリカ、両方の視点を持ったブランドづくりができる点だと思いますね。強みは、未来の消費者が『これを飲んでいる』という景色が見えることでしょうか。思い込みもあるかもしれないけれど、そういう未来の景色が見えてしまって、いま、その未来になんとか近づけていこうとしているんでしょうね」

ハイスペック人材は、とかくジェラシーの対象になりやすい。かく言う筆者も、なんとかして塚田さんの起業に瑕疵かしを見つけてやろうと思ったのだが、そもそも瑕疵を見つける能力がなかった。

唯一、経験的に言えるのは、筆者の知る著名な起業家の中には、自ら開発した商品やビジネスモデルについて熱狂的に語る人が多かったということだ。しかし、塚田さんは「熱狂的な抹茶好き」というよりも、どこか冷静にビジネスを分析している印象が強い。それが果たして、今後のCUZEN MATCHAの展開に影響するのかしないのか……。

ちょっぴりジェラシーを込めながら、塚田さんの今後を見守っていきたい。

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