コロナ、ウクライナ危機、インフレ、円安……。日本人の生活はますます貧困化している。経済ジャーナリストの須田慎一郎さんは「コロナ禍で富裕層の財布のひもも固くなり、営業自粛のため銀座の高級クラブのホステスさんの収入も激減し、急場しのぎのアルバイトをする人もいる」という――。

※本稿は、須田慎一郎『一億総下流社会』(MdN新書)の一部を再編集したものです。

夜の繁華街
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富める者たちのいま

日本を覆う「貧困化」の対極にある「富める者」たちの“現在地”について見ていきたい。

東京・赤坂のTBS近くに、老舗のそば屋「室町砂場 赤坂店」がある。本店は東京・日本橋にあり、もりそばに天ぷらを組み合わせた「天もり」や「天ざる」発祥の店といわれる、赤坂随一の名店である。場所柄もあって、政財界の大物がこぞって来店するため、店の前には黒塗りの車がひっきりなしに停車していたことでも知られる。

ところが、コロナ禍で客足がすっかり遠のいてしまい、最近は黒塗りの車を見かけることもめっきり減ってしまった。コロナの重症化リスクが高いとされる高齢者を中心に富裕層はいま動かなくなっているようだ。

そういえば、こんな話を聞いたことがある。福島県のいわき市で、手広く事業を展開している建設会社の社長から直接聞いた話だ。

いわき市は、福島県の浜通り南部に位置する中核市で、東北地方では宮城県仙台市に次いで人口が多い都市だ。ここ近年は東日本大震災の復興需要で、経済面では大きく潤っていたといっていいだろう。

その社長がいう。

「市内には、一五~一六軒のソープランドがあるのですが、このコロナ禍のなか、銀座の高級クラブのホステスさんが出稼ぎに来ていたというのです。とはいっても、ごく短期間で一気に稼いで東京に戻っていくそうです。彼女たちの目的は、コロナ禍で仕事、売り上げが激減しているなか、高額な自宅の家賃をなんとか稼ぐことにあるそうです」