暴力をふるう父に「自分もいつか」と怖くなった

一方、母の献身とは別の脈略で非出産に影響を与えた主な要因として、父の暴力について話してくれたインタビュー参加者もいた。

【ミナ】子どものころ、父がとても暴力的だったんです。お酒を飲むと母を殴り、私も殴られました。でも昔はやられてばかりだった母が、大声を出して一緒にけんかするようになって、私も大人になってからはあまりなくなりました。今は、もうすっかりひからびたおじいさん?(笑)そういうのが「私は子どもを産みたくない」という考えにちょっとは影響を与えたと思ってます。それにお酒を飲むと私も気づかぬうちに暴力的になるんじゃないかと、ちょっと怖いし。

※ミナ 25歳。結婚2年目。会社員のパートナー、犬と慶尚北道の小都市A市に暮らす。結婚を機に仕事をやめたが、最近宅建の資格を取得。

——自分に父親と似たような面があるんじゃないかと?

そういうのもあると思います。

【ハンナ】家が厳しくて母はいつも働いていて苦労して、父は映画やドラマに出てくるような、お酒を飲むと別人になるタイプでした。親がけんかをすると、家中のガラスが割れて、血の海になるぐらいのひどい暴力家庭でした。その時からだった気がします。私が子育てする準備ができていないなら、子どもの幸せのためにも産まないほうがいいと思ったのは。

※ハンナ 41歳。結婚4年目。フリーランスのメイクアップアーティストで、会社員のパートナーと2匹の猫とソウルに暮らす。

「不幸な生い立ちだったんだね」に違和感がある

インタビュー参加者たちにとって、両親の結婚生活や彼らが親として見せてくれた姿がそれぞれの望む家庭のイメージを描くときに反面教師として作用している場合が多くあった。ボラは、「父が、お金さえ稼いでくればいいと思っている人で、家族がとても苦労したので、私が配偶者の条件としてまず大事にしているのが、家庭的で私の味方になってくれる人というものでした」と語る。

「ひどいけんかをするわけじゃないのですが、冷めきった感じで互いを理解できない」両親を見て育ったユニは「子どもにとっては、夫婦がお互い愛し合う気持ちを伝えたほうがいいと思います」と語る。

しかし、「親のせい」だと言うには、非出産という選択をとりまく多くの要因はそれぞれの人生にそれぞれの比重で存在する。母親の人生について話してくれたヨンジもまた、それが自分にとって決定的な影響を与えたのではなかったと言い、過大な解釈を警戒した。

【ヨンジ】子どもを持たない理由が100だとして、両親の影響は10に満たないとしても、人々はそういう話を聞くと残りの90を見もせずに、「不幸な生い立ちだったからなんだね……かわいそうに」というふうに受け取られるんですよ。

私もそう思う。両親の人生は私の望む夫婦像とは違ったが、彼らの子どもとして不幸だったとは絶対に言えない。