電気が止まればタワマンは「陸の孤島」になる

都会の住居の中でも、危険度が最も高いのは高層マンションでしょう。

都心の高層マンションは庶民の憧れの的といいますが、私にいわせれば、なぜあんな怖ろしいところに大金を投じて住みたいのか理解できません。

オール電化の高層マンションで電気が止まればどうなりますか。

一日でも大変なことになるでしょうが、復旧の見込みが立たないほどの長期停電となれば、その瞬間から住んでいられなくなります。エレベーターが動かず、電気が使えず、水洗トイレも使えなくなった家で、あなたは何日頑張る自信がありますか。何億円の高級マンションでも、一瞬にして山の中のテント生活より厳しいサバイバル現場になります。

2019年10月、台風19号で多摩川の水位が上昇し、排水管を逆流した水で武蔵小杉の47階建てタワーマンション2棟が浸水。停電でエレベーターも停止して、一瞬にして陸の孤島状態になるということがありました。堤防が決壊したわけでもないのにこういうことが簡単に起きたことで、ショックを受けたかたも多かったでしょう。

ゼロメートル地帯もお気楽な気持ちでは住めない

また、東京では海抜ゼロメートル地帯の下町が自然災害に対して危険度が高いことは周知の通りです。洪水の被害が起きやすいだけでなく、古い木造家屋が密集し、道も狭く入り組んでいるため、火災が起きたときに逃げ場がないからです。

下町の人情や江戸の風情は生活の場として大変魅力的ですが、災害時のことを考えると、お気楽な気持ちでは暮らせません。

浸水や火災の危険地帯は、概ね荒川、隅田川沿いに帯状に延びていますから、東京脱出ルートとしても、これをまたがないで逃げることを日頃から考えておきましょう。

東京の主要都市の鳥瞰図
写真=iStock.com/Фадеев Олег
※写真はイメージです

例えば中野区に住んでいる人が群馬県の親戚の家を目指して避難しようとした場合、最短距離を通ろうとせず、一旦北西方面に向かい、和光市や朝霞市を経由したほうが安全かもしれない、といったシミュレーションをしておくのです。

雪が数cm積もっただけでも大騒ぎになる東京です。大規模災害時には戦場を突破するくらいの危険を伴うであろうことは覚悟しておかなければいけません。

また、火災や浸水の心配がない場所にいるなら、いきなり外に出るのではなく、状況が把握できるまでは動かないという判断が必要になることもあります。