4月21日には、マリウポリの市長顧問が、「死亡した住民が大量に埋められた場所を長い時間をかけて捜索・特定した」と通信アプリ「テレグラム」に投稿。メディアも衛星画像つきで、多数の墓と見られる穴が発見されたことを報じた。ロシアが民間人攻撃を隠蔽いんぺいするために、ここに埋めた可能性があることが分かった。

宇宙から地上を監視する衛星の威力と、それを世界に拡散するSNSが、プーチン大統領の狙いを次々と打ち砕いている。

ロシア海軍黒海艦隊の旗艦「モスクワ」がウクライナ沖で沈没した、と4月14日にロシアが発表したのも、隠していてもいずれ衛星画像付きで報じられると考えたためとみられている。

侵攻がきっかけでかつてない“特需”に

ロシアの軍事侵攻後、衛星画像ビジネスはこれまでになかった特需を経験している。

長い間、衛星画像は安全保障上の機微な技術と考えられてきた。宇宙から撮影することで、その国の重要施設や地形が分かる。一方、衛星画像の精度から衛星の性能や、衛星を保有する国の技術力も推察されてしまう。撮られる側、撮る側、どちらもリスクを伴うからだ。

米国など各国政府は、詳細な画像を軍事機密として扱い、販売や公開を制限してきた。その結果、軍事や政府関係者以外の一般の人の目に衛星画像が触れることは少なく、ビジネスとしても成立しなかった。

1990年代に入ると、米政府は規制を緩和し、軍事用の詳細な衛星画像以外は、商用化を進めた。だが、なかなか市場は成長しなかった。それが変わったのが2000年代だ。IT(情報技術)の進展や、衛星の撮影能力向上など、技術の進歩が後押しした。

宇宙ベンチャーも多数誕生し、ITやAI(人工知能)を活用した画像処理が進み、衛星画像ビジネスは飛躍的に成長する。