境内でメイドカフェ、農村に巨大美少女絵

東京都八王子市の了法寺(りょうほうじ)。甲州街道に沿った入り口には、ひときわ目につく案内看板がある。弁財天をモチーフにした「とろ弁天」や、鬼子母神がもとになった「まま」……。仏様や神様が、可愛げなキャラに姿を変えている。看板が設置されたのは、2009年5月のことだ。

(右)松栄山了法寺・中里勝孝住職(45歳)。立正大学仏教学部卒。1989年より住職を務める。(左)イラストを描いたとろ美さん。寺での催しでは、毎回「とろ弁天」(画像)のコスチュームで登場している。

「以前から、地域の人に気軽に訪れてもらえる場所になりたいと考えていました。とくに若い人たちに、お寺を身近に感じてほしかった」(中里勝孝住職)

友人で企画会社を経営する三井一仁さんに相談したところ、「萌え寺」の企画が生まれた。イラストを描いたのは「アキバ系」の声優兼イラストレーターのとろ美さん。当初はとろ美さん自身も戸惑ったという。

「住職から『新しい解釈でイラストを描いてください』と説明を受け引き受けました。ただし、間違いや失礼がないように、細部まで気をつけました」

了法寺は500年以上の歴史を持つ古刹(こさつ)。約300の檀家(だんか)を抱え、「何もせずとも、寺は維持できる環境」(中里住職)という。だが、過去の隆盛を懐かしむだけで、何も変わろうとしない仏教界には不満があった。

看板を設置したところ、まずネット上で話題になり、海外メディアも取材にきた。09年11月には、境内でエプロン姿のメイドが給仕を行うカフェを開催。2日間で約2000人が訪れた。ただし檀家が増えるといった直接のメリットはまだない。土産品としてグッズ販売も行うが、儲けるつもりはない。

「関係者には様々な考え方があると思いますが、私の一番の目的は布教です。そこから脱線するつもりはありません」

中里住職は一点、つけ加えた。