「ブームに乗るつもりはなかった。イラスト付きのコメが売れた事例がありましたが、二番煎じになるので、事前に知っていれば、別の方法を採ったはず」

JAうご・佐々木常芳課長(48歳)。農業高校卒業後、1981年に農協へ。「イメージキャラクターにはあえて名前をつけていないんです」。

秋田県羽後(うご)町のうご農業協同組合(JAうご)では、08年9月、米袋に美少女イラストの描かれた「あきたこまち」をネットで販売した。すぐに全国から注文が殺到し、例年の3倍となる45トンを売り上げた。

稲穂を手に市女市笠(いちめがさ)の美少女イラストは、人気ゲームを手がける西又葵さんが描いた。08年6月、地元のイベントに西又さんが参加したのをきっかけに依頼。発売前には「中身のコメは捨てられるのでは」との懸念もあったが、同じイラストを使った09年も45トンを販売した。JAうごの佐々木常芳課長は、「コメの質も評価してもらえたんだと思う。一過性で終わらずに済み、ほっとした」と話す。

取り組みは進む。09年1月には地元特産の羽後牛を使ったレトルトカレー、09年7月には光センサーで糖度などを計測したスイカを、西又さんのイラストをつけて発売した。

09年12月には、美少女イラストの看板を農協の正面に掲げた。大きさは縦4メートル、横2.7メートル。夜間にはライトアップされる。職員の名刺にもイラストが載る。佐々木さんはいう。

「農協は限られた枠の中で仕事をしているイメージがある。でも前例踏襲では先がない。恥ずかしい思いもあるが、せっかくの貴重な機会を活かしたい」

1パック890円のカレーは1万パックを販売。だがスイカは用意した1000個のうち半分が売れ残った。反省もある。

「一玉売りだったので、一人暮らしの人に合わなかった。またコメと違って、イラストと地元との関わりも薄かった。イラストをつければ、何でも売れるわけじゃない」(佐々木課長)