河野氏も「比例区に適しているかも」と手応え

「また、アバターにはそれぞれ名前もつけられて、人によっては本名だったり、ハンドルネームだったりですが、登壇者のほうからその名前で聴衆アバターに個別に呼びかけることもできる。その返事をコメントに書き込んで、その場で双方向の対話もできる。

登壇者もどんどんノリノリになってきて、河野議員など、演説途中で『じゃあ、この中で北海道から参加してる人はジャンプしてみて!』と呼びかけると何人かのアバターがほんとにジャンプしたり、逆にアバターからのコメントで『三重県も呼びかけて~』とリクエストも出たり、リアル演説会では感じられなかったような会場での一体感も得られました」

VRゴーグルを装着し、コントローラーでアバターを操作する川崎氏
写真提供=川崎ひでと氏
VRゴーグルを装着し、コントローラーでアバターを操作する川崎氏

当の河野氏も、終了後に「全国どこからでも同時に参加できるメタバースは、とりわけ参議院比例区の選挙活動にはいちばん適しているかも」と語るなど、かなりの手応えを感じたようだ。

旧フェイスブック、マイクロソフトも参入する成長市場

政治をより身近に感じられ、政策討論や投票行動にもつなげられるメタバースだが、実際にはすでにビジネス領域でも世界的に続々と大手企業の参入が始まっている。最も親和性が高いのはゲームなどエンターテインメント業界だが、ビジネス全域ではその市場規模は2028年に8289億ドル(110兆円)にまで膨らむという予測もある(調査会社「Emergen Research」による試算)。

その代表例が社名を「Meta(メタ)」に変更した旧フェイスブックで、マイクロソフトもオンライン会議アプリの「Teams」を拡張し、メタバース上で会議や交流ができるシステムをすでに開発している。

こうした流れに乗り遅れまいと、川崎氏らはさらなる政治の場での取り組みを考えているという。

「メタバース上での街頭演説会や政策討論会などもこれからもっと回数を増やしていきたいと思っていますが、これにWeb3.0のさまざまなツールを組み合わせられないかと検討しています。例えば、NFTなどを活用すれば、もっと楽しみながら政治に関わっていただけるんじゃないでしょうか」

非代替性トークンと呼ばれるNFTは、これまでコピーや複製が容易ゆえに価値がないとされてきたデジタルデータを、完全に複製できない、つまり代替性のない唯一無二の価値を持たせられる技術。すでにアートやゲームの世界でも、デジタル作品が一品ものの価値を認められ、ダ・ヴィンチやゴッホの絵画のように数十億円から100億円以上の価値を見いだされるようにもなった。