損しやすい人は「10年後なら我慢できる」と思い込む

少し繰り返しになりますが、次の質問を考えてみてください。

【質問1】次の2つの選択肢のうち、あなたの好きなほうを選んでください。
A 今日、100万円をもらう
B 1年後、110万円をもらう

【質問2】次の2つの選択肢のうち、あなたの好きなほうを選んでください。
C 10年後、100万円をもらう
D 11年後、110万円をもらう

もし、あなたがフィットネスクラブでお金を払いすぎる傾向にある人なら、質問1ではAを、質問2ではDを選んでいるはずです。つまり、非合理的な判断をして、損しやすい傾向の人である可能性があります。

AとDを選んでいた場合、問題になるのは、みなさんが今日ご褒美をもらえるとなればいてもたってもいられないのに(Aを選ぶ)、10年後の話になったら自分は我慢ができると思い込んでいることです(Dを選ぶ)。

いざ10年後になったとき、しっかりそこから1年間待てますか?

あまり自信はないですよね。10年後に突きつけられる問題は、結局、質問1と同じなわけですから。

目の前のご褒美やコストを重視しすぎると判断が歪む

このように、目の前のご褒美やコストを重視しすぎてしまい、判断が歪むことを行動経済学では「現在バイアス」と言います。

太宰北斗『行動経済学ってそういうことだったのか!』(ワニブックス)
太宰北斗『行動経済学ってそういうことだったのか!』(ワニブックス)

先ほど割引率自体は個人の好みと言いましたが、どうやらその好みも一貫していないというのが原因です。つまるところ、将来のことについても“見たものがすべて”で判断していて、注意が向きにくい遠い未来のことほどうっかり見落としてしまう、という感じです。

さて、フィットネスクラブの話で確認しましょう。入会のときには回数券と比較して、月7000円の月額料金がお得だと思ったから、月契約にしたはずですよね。その時点では「月7回以上は利用する」と思っているわけです。

このとき、1カ月の間に7回運動しないといけないコストは、将来のことなので軽く見られています。でも、いざ次の日になって運動するかというと、そうはしません。100万円を待つのがつらかったように、“今日”ジムに行くのが面倒になってくるからです。

つまり、いつまでたってもイタチごっこを繰り返し、どんどん問題は先延ばしになってしまう、というのが現在バイアスの問題です。

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