盛り上がった便をならしに現場に出動

避難者はトイレの問題から水分を控えたり、男性は断水していても使える施設内の小便器を使うので、便槽の大便は固くて次第に富士山のように盛り上がってくる。便槽の容量には余裕があっても便器の下から石筍せきじゅんのように大便が盛り上がってくるので、汲み取りの依頼頻度が高くなる。

汲み取りトイレを見たこともないという市民もおり、「汲み取りに来てくれ!」という悲鳴にも近い要望で行ってみると、実はまだ余裕があるという状況も少なくなかった。そのためわれわれトイレボランティアは神戸市の依頼で、便槽の便をならす道具を持って現場で作業を行うとともに、避難者にチラシを配って適切な使い方を知らせるという作業を行った。

現場に行く前に寄付金を集めて、現地からのニーズに応じて救援物質を届けるという活動も行っていた。特に要望があったのは、ゴム手袋、火ばさみ、十能、デッキブラシなどの清掃用具である。仮設トイレの清掃や管理は避難者の手できちんと行われていたが、こうした清掃用具が足りていなかった。仮設トイレは屋外にあるので、室外からの汚れを持ち込まないようにすることが必要で、そのためのマットなどの要望もあった。

ライフライン復旧で自宅に帰ったはいいものの…

神戸市内の仮設トイレは、約1カ月後には550カ所、3041基が配置された。ちなみに、そのうちの約2800基は他の自治体や民間から提供されたものである。

発災直後は仮設トイレの設置と汲み取りを早くという要求が殺到したが、しばらくして避難所が「生活の場」となってくると、「洋式トイレにしてほしい」「トイレに照明をつけてほしい」「男女別にしてほしい」などの要望が多くなった。避難所となっている建物から仮設トイレまで遠いので、特に高齢者にとっては不便で「建物の近くへ移動してほしい」など、トイレに対する要望の内容が変わってきた。

ライフラインが徐々に復旧すると自宅に戻る人が増えてくるが、マンションでは汚水の排水管が予想以上に損傷しており、上水道が通水しても水洗トイレが使えないというケースが少なくなかった。また地域の小施設に数世帯が移って避難生活を始めるというケースもあり、こうしたところではマンションや広場、小公園などに仮設トイレを設置してほしいという要望が寄せられるようになった。