「戦争で殺された人を海に沈めて2度殺そうとしている」

那覇市在住で沖縄戦資料の研究を続けてきた元琉球大学講師の山内栄(70)は言う。

「辺野古新基地建設の賛否以前に、沖縄戦戦没者の遺骨が混じる土砂を埋め立てに使うことは、戦没者や遺族に対する冒とくであり、人道上断じて許すわけにはいかない。戦争で殺された人たちの遺骨を、国は海に沈めて2度殺すようなことをやろうとしている」

沖縄県議会は2021年4月、沖縄戦戦没者の遺骨などが混入した土砂を埋め立てに使用しないことを政府に求める意見書を、新基地建設を容認する会派も含めて全会一致で可決。同様の意見書が全国の地方議会で次々と可決されている。

冒頭で記したように「平和の礎」には7万7000余りの県外出身者の戦没者の氏名が刻まれており、遺骨が混入した土砂の投入は、これまで大きな負担を強いられてきた沖縄だけの問題ではない。戦没者の尊厳を守ることは、全国に共通する課題である。にもかかわらず政府はなぜ、戦没者や遺族の尊厳を踏みにじるような行為をするのか。

沖縄、第二次世界大戦記念碑
写真=iStock.com/Sean Pavone
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前出・山内が続ける。

「沖縄県議会は2015年、埋め立てに使用する土砂などに特定外来生物が付着したり、混入したりするおそれがある場合、県の立ち入り調査や知事が搬入中止勧告を行うことなどを盛り込んだ『県外土砂規制条例案』を可決した。県外土砂を使用しないことで、工事の障壁となりうる県外土砂規制条例の網をかいくぐる狙いが透けて見える」

沖縄県は2021年11月25日、防衛省沖縄防衛局が軟弱地盤に対応するため申請した設計変更について、軟弱地盤の調査の不備や環境保全への措置が不適切だとして「不承認」とした。

同日記者会見に臨んだ玉城デニー知事は、「本来、沖縄防衛局において事業実施前に必要最低限の地盤調査を実施すべきであったにもかかわらず、これを実施せず、不確定な要素を抱えたまま見切り発車したことにすべて起因するものと考えています。その結果、出願時に示した工期を大幅に延伸しなければ埋め立て工事を完成させることができなくなり、また当初の計画を上回る莫大な経費を追加せざるを得なくなったということです」と厳しく指摘した。