同調査でも、「売買相手に親近感を覚えますか?」という問いに「覚える」「やや覚える」と答えた人が計34.8%に上り、自由回答には「つながっているささやかな嬉しさを感じた」(60代女性)、「ちょっとした一言がとてもいいコミュニケーションになっていると感じる」(70代女性)、「送った商品へのアドバイスに感謝され、しばらく売買から離れた会話を繰り返していた」(60代男性)等々、コミュニケーションそのものに意義を見出しているのがわかる。

フリマアプリ利用を通じて、売買相手に親近感を覚えますか?

また、「利用後に意識に変化はありましたか?」という同調査の別の問いに、62.1%が「あり」と答えており、うち15.8%が利用後の意識の変化として「社会との繋がりを感じる」を挙げているのもその裏付けとなろう。前出の森永氏も言う。

フリマアプリ利用後の意識変化調査

「私が一番『なるほど』と膝を打ったのは、フリマアプリが新型コロナウイルス感染症によって奪われた密なコミュニケーションの場を提供し、シニア世代の孤独感を和らげている可能性があることでした」

もしそうなら、中高年の孤独を癒やす場が、いつの間にか思わぬところで生まれていたことになる。

記憶を閉じこめたタイムカプセル

実は、メルカリはこの調査で、「老後の不安について当てはまるものをお答えください」とも問いかけている。すると、60代以上の男女の22.2%が「孤独、社会との関わりが希薄になる」ことを心配していて、「お友達と会うことができなくて寂しい」(70代女性)、「少し距離がある家族以外の友人、知り合いとの交流が一切なくなり(中略)コロナ流行前の生活には永久に戻れないのではないかと思うと気が滅入る」(60代女性)、「子供や孫たちに会えなくなり、寂しい気持ちが募った」(60代男性)と、孤独・孤立を訴える自由回答が散見された。

老後の不安についての調査

では、そうした孤独を物品のやり取りで癒やせるのだろうか。50代前半のある女性ユーザーに聞いた。

「九州出身の両親が私の嫁入り道具として揃えた有田焼が、何十年も未使用のまま(苦笑)自宅にたくさんあります。お気に入り以外をそろそろ処分しようと、メルカリを始めました。自分の所有物を検索して、価格の相場を確認しています」

そのとき、同じ有田焼を出品している人を何人も発見するのだが、

「その人たちが出品している他の物品が、あれっ!? と驚くくらい、子どもの頃に我が家で使っていたのと同じものばかり。ああ、懐かしいなあ……と」