真綿で首をしめるようにロシア国民を苦しめていく

ロシアの経済はすでにマイナス成長に陥っている。欧州復興開発銀行によると、2022年の国内総生産(GDP)成長率はマイナス10%で、23年もゼロ成長が予想されている。ソ連崩壊直後の1992年にマイナス14.5%のマイナス成長率を記録した時に次ぐ落ち込みだ。2月時点の失業率は2%強だが、22年末には7%まで悪化するとの予想もある。

ロシア経済は急速に収縮し始めている。ロシアの国富はそがれ、貧しくなっていく。ロシアのインフレ率は侵攻直前の8%程度から15%強に倍増している。物価上昇は真綿で首をしめるようにロシア国民を苦しめよう。まだ、物資不足に陥ってはおらず、ソ連崩壊直後やルーブル危機時のような物不足には至っていないが、砂糖や生理用品など一部の商品は品薄で買えない状態となっている。

ロシア政府は小麦などの穀物は6月末まで、砂糖は8月末まで国外への輸出を制限するなど、買占めによる商品不足に備えている。ロシア国民の生活は徐々に悪化してこよう。

これまでの危機とは性格が異なる

雇用の減少による失業率の上昇も懸念される。外資系企業はロシア国内で数十万人の雇用を生み出しているが、すでに西側諸国の有力企業がロシアから撤退を表明・実行している。現地の感覚では、外資系企業は「撤退」と報道されているが、実際は「一時休業」のようなものとの甘い見方もあるが、予断を許さない。

ロシアでは企業側の理由で従業員を解雇する場合、最大3カ月間は給与を支払わなければならないと法律で定められている。外資系企業の撤退に伴う雇用への悪影響はこれから本格化する。安易な見方は“現状では”というカッコ書きの見立てでしかない。インフレ率も制裁の拡大、侵攻の長期化に伴い20~30%へ上昇する可能性も指摘されている。

2014年のクリミア併合直後もロシア経済は停滞を余儀なくされたが、今回のウクライナ侵攻はこれまでの危機とは性格が異なる。ロシアは「異質な警戒すべき国」と認識されている以上、外資の経済活動はこれまでのようにはいかない。侵攻の代償は重い。

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