(PANA=写真)

台湾総統 馬英九(Ma Ying-jeou)
1950年、香港生まれ。台湾大学法学部卒。米ハーバード大法学博士。蒋経国元総統の英語通訳秘書官を経て、33歳で最年少の国民党中央委員会副秘書長。法務部長、台北市長を経て、2005年国民党主席、08年台湾総統に当選。今年再選された。


 

「無能者と未熟者ではどちらがましか。台湾総統選挙は究極の選択だった」と、ある有権者は語った。

「中国と米国が支持する無能者を選んだ」。

そう揶揄されるのも仕方ない。2009年8月、台湾南部を襲った台風8号による大水害への対応の遅れは自らも認める大失点だった。ハーバード大留学時代にグリーンカードを保持していた事実を暴露されたときの対応を見ても、予期せぬアクシデントに弱いらしい。

野心はうかがえる。昨年10月に「10年以内に(中台)和平協定を締結する可能性」について言及した。締結要件として住民投票の通過など高いハードルを設けてはいるが、任期中に国共トップ会談でも実現し、台湾海峡の平和が約束されればノーベル平和賞ものだ。1期目の4年では「一つの中国の原則(その解釈は双方が保留)」を貫く「1992年合意」を根拠に「三通」(通信、通航、通商)を実現させ、経済の緊密化を図った。次の4年の最大の焦点は政治交渉に入るか否かだ。

中国湖南省に祖籍を持つ香港生まれの外省人。甘いマスクと裏腹に、米留学中は忠実なる国民党の職業学生として、反体制学生への監視活動にも携わった強面だ。尖閣諸島の領有については「日本と一戦を交えることもいとわない」と言い放ったタカ派でもある。

ただ政治交渉となると開始時期を含め、主導権を握るのはおそらく北京。馬氏再選の大きな要因でもある中国経済依存の大きさを思えば、対等の交渉はありえない。中国の出方次第では和平どころか主権維持さえ難しい状況もありうる。それは台湾海峡をシーレーンの一部とする日本の安全にも関わる問題だ。馬氏が2期目、無能者の誹りを返上できるかは、もはや揶揄では済まない。その舵とりがアジア太平洋の命運を左右するのだ。