東京の湾岸地域に林立するタワーマンションを「終の住処」としても大丈夫なのだろうか。オラガ総研の牧野知弘さんは「湾岸タワマンが大自然の引き起こす災厄に立ち向かえるとは断言できない。不動産の価値とは結局土地に収れんする。江戸時代から富裕層が高台を選んでいるという事実は重い」という――。

※本稿は、牧野知弘『不動産の未来 マイホーム大転換時代に備えよ』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

青空の下で東京のウォーターフロントの風景を撮影する
写真=iStock.com/Moarave
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30年の間に発生する3つの大地震

小松左京が描いたSF小説『日本沈没』がいつ現実のものとなるか、誰にもわからないのが自然災害である。

日本全体が沈没してこの世からなくなるというのはさすがに想像しづらいものがあるが、大地震は専門家の予測によればどうやらかなり近い将来に現実の出来事として我々の身に生じることになりそうだ。

政府の地震調査委員会は、今後30年の間に3つの大地震が発生する可能性が高いと予測する。3つの地震とは静岡県駿河湾近辺を震源とする東海地震、三重県から和歌山県の沖合を中心とする東南海地震、そして四国の高知県沖を震源とする南海地震の3つを指す。

3つの大地震のうち、今後30年以内に発生する確率は、マグニチュード8.0の東海地震で88%、同8.1の東南海地震で70%、同8.4の南海地震で60%とされ、この確率は当然だが歳月がすすむにつれて高くなっていくことになる。

今でも記憶に新しいのが1995年に発生した阪神・淡路大震災と、2011年に発生した東日本大震災である。阪神・淡路大震災では、旧耐震基準で建築された多くのオフィスビル、マンション、家屋などの建物に大きな被害が生じた。

また老朽化した高速道路などの社会インフラでも多くの被害が発生した。小規模木造家屋が密集していた神戸市の長田区などが火災で甚大な被害を受けたことは、木造家屋密集地域の安全性に対する危機意識を高めた。