3泊4日の断食生活が始まった

大沢氏にも「私のところに来る理由付けとしては充分すぎるほどお疲れのようですね」と気の毒がられてしまった。自分では気が付いていないだけで、体は悲鳴をあげていたようだ。

「人間は体調を崩すと栄養のあるものをたくさん食べようとします。しかし動物はどうですか。何も食べずにうずくまり、ひたすら眠り、消化活動をストップさせる。それが自然のサイクルなんです」

大沢氏との面談が終わり、3泊4日の断食生活が始まった。まず大きな効果を感じたのは初日の夕方に行ったヨガだ。前日の夕食後から何も食べていないので、すでに体がいつもより軽い。その状態で30分ほどポーズを取りながら呼吸を整えると、背中の痛みがスッとどこかに消えていったのである。夕食は具なしの味噌汁をすすっただけだが、不思議と空腹は感じない。ヨガのリラックス感がまだ残っており、21時には眠ってしまった。

2日目の朝はトレイルウォークから始まった。私が宿泊しているやすらぎの里・養生館は海岸沿いの崖に位置する。横目に海を眺めながらほかの宿泊客とともに山道を50分かけて歩く。細身の体で岩の上を軽快に進んでいく40代の男性は、年に2回のペースで断食道場に訪れるという。

「経営者の知り合いからの勧めで5年前から、やすらぎの里に来るようになりました。彼は会社をいくつも経営したり、ときには売却したりと、僕からしてみれば鋼のメンタルの持ち主といった印象でした。でも、そうやって常に頭を使っている人ほどメンタルの調整には気を使っているんですよね」

そう話す男性も、医療関係のサービスを提供する会社を経営している。やはり日々頭を使ってばかりという自覚があり、「脳のデトックス」を目的に断食道場へ足を運ぶのだという。今回は1週間のコースだ。

「僕はロジックではなく感覚で仕事を進めるタイプなんです。数字で分析もするけれど、それよりはこのサービスを利用した人が何を感じるかを想像する。そして、その感覚を大事にする。だから、こうやって時々脳をデトックスしておかないことには、自分の本来の力が発揮できないんです」