なぜ他の食材ではなく、人参なのか。健康食品課主任の和田聡子氏は、「健康をしっかりと管理したい、不調の時に支えてもらいたいといった明確な目的を持つお客さまのニーズがあるからです」と話す。

実際、ハルメクが消費者調査をしたところ、野菜ジュースを飲む目的は「野菜の栄養をとりたい」が最上位だったのに対し、人参ジュースは栄養目的ではなく、「健康維持をしたい」という項目がトップにきたという。

健康食品課主任の和田聡子さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
健康食品課主任の和田聡子さん

シニア女性の心をつかむための努力

人参ジュースを飲みやすくするために国産のりんごとレモン、梅を使っているが、これにもこだわりがある。

人参ジュースの材料。人参づくりは土からこだわっている
ニンジンの生産は、土づくりにもこだわっている(撮影=中西裕人)

「りんごは青森産の高品質なものだけを厳選し、コクを出すために、蒸して空気に触れさせない製法ですりおろしています。そうすることで酸化も止められるので、酸化防止剤などの添加物は不要です。とにかく安心安全で、よりおいしいものをお客さまに届けたい。最近ではオーガニックなジュースも増えてきていますが、16年以上も前からこのつくり方を続けているのはあまりないのでは」(和田氏)

実は、以前、レモンや梅はエキスを使っていた。2011年に事業拡大を目指して生産体制を強化したタイミングで、人参ジュースをプライベートブランド化し、質もさらに高めようとエキスを止めて現在の原料に変えた。

「健康のために毎朝のルーティンにしている人もいれば、食事の代わりに人参ジュースを飲んでカロリーコントロールをしている人もいます。ただし、何よりも長く続けられる味であることが大きいです」(和田氏)

原料にこだわり、手間暇かけて製造している一方で、価格はできるだけ抑えようとする。他社でも同じような原料や製法の人参ジュースはあるが、ハルメクの倍近い値段のものもある。顧客目線に立ったこうした企業努力は怠らない。

「まだまだ完成形ではない」

もう一つ、人参ジュースの特徴として、常に商品を改善させている点がある。

売り上げナンバーワンが続くことで、その地位にあぐらをかいてしまっても不思議ではない。しかし、小川氏は「まだまだ完成形ではない」と鼻息は荒い。見た目ではわからないが、人参ジュースは細かなバージョンアップを随時行っているという。

シニア世代の声がダイレクトに届くことも、商品の質を高めるモチベーションになっている。過去にこんなこともあったと、小川氏はエピソードを披露する。

「前に飲んだらトロっとしておいしかったから定期購入を申し込んだのに、味の薄い人参ジュースが送られてきた、というクレームがありました。天然の素材なので、どうしても味にばらつきが出てしまうのですが、すぐにメーカーと話をして、濃すぎず、薄すぎず、きちんとコントロールするよう徹底しました」