立場逆転! 折り合いの悪かった上司からしっぺ返し

リモートワークの特性を利用した嫌がらせや、いじめの相談も増えてきています。

リモートワークによって、表面上は取り繕っていた人間関係のほころびがあらわになってしまった、という事例をご紹介しましょう。

課長のAさんは、課内のBのことを内心苦々しく思っていました。BはAさんよりも年上なこともあってか、会議ではAさんの発言を遮って反対意見を述べたり、課内のメンバーにAさんへの不満を吹聴したりと、自分の優位を印象付けるように振る舞うところがありました。課内のメンバーは、「Bさんの機嫌を損ねると面倒だ」と同調。結局、AさんもBの意見を無下にすることはできず、計画や納期の調整をするなど骨を折ってきたのです。

ところが、コロナ禍によるリモートワークへの移行で状況は一変しました。

Bは、不満をぽそっと小声でつぶやく、Aさんの発言中にため息をつく、ボールペンをカチカチ鳴らしていら立ちをアピールするなど、会議室の空気を支配することを得意としてきました。しかし、オンラインミーティングでは、そうした行為は画面に拾われません。誰かの発言に割り込むこともマナー違反。Bの得意な「場の雰囲気づくり」が通用しなくなり、一人ひとりがBの顔色を伺うことなく意見を述べるようになったのです。

ビデオ会議の概念
写真=iStock.com/metamorworks
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簡単に「のけ者」にされる危険性

さらに、Aさんはこれまでの鬱憤を晴らすかのように、B以外のメンバーにばかり発言を求め、まるでBがいないかのように扱います。これまでの「Bファースト」なやり方はすっかりAさん流に改められ、Bの求心力は急低下してしまいました。

上司にマウントをとるようなBの日頃の態度が招いたこと、と言えばそれまでですが、オンラインでのコミュニケーションが持つ危険を示唆する事例とも考えられます。ビデオ会議では、誰かをのけ者にしたり、意図的に発言させないようなことも簡単にできてしまう、ということです。さらに、オンライン会議は退室すれば、そこで終わり。フォローや弁解の機会もないため、どんどん関係が冷え込み、修復できないところまで悪化してしまう可能性もあるのです。「のけ者」の標的になるのを避けるためにも、こうしたオンラインコミュニケーションの性質を理解し、これまで以上に、普段から良好な関係を築いておく努力が必要になります。