人には見せられない!「鶴の恩返し勉強法」

なので、英語力をつけたい場合、単語や構文を目で追っているだけでは不十分です。もっと大切なことは「使う」ことです。

脳を整える! 効果的な3つのトレーニング

外国人に積極的に話しかける、海外のニュースを英語で聞く、英語の小説を読む、英語で日記を書く。五感を使えば使うほど、記憶は定着していきます。なぜなら「長期記憶」を司る側頭連合野は、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚などの五感を統合するところでもあるからです。

「見る」「書く」「聞く」「話す」など、さまざまなアクションを同時に駆使したほうが、記憶は定着しやすい。その脳の性質を利用して私が編み出したのが、「鶴の恩返し勉強法」です。文章を書きなぐって、大声で読み、記憶していきます。「私がはたを織っているところを見ないでくださいね」と言い残し籠もったおつうのごとく、髪を振り乱して勉強している姿は人に見せられません。しかし、クールに黙読しているよりはるかに記憶できるのです。

語学だけに限らず、学んだ知識はアウトプットしたほうが定着度は高い。昔から「人に話すと覚える」「テストに出た問題は忘れない」と言われてきた所以です。社内での雑談、ランチタイム、飲み会の席で、「今、こんなことを勉強しているんだけどね」と、ぜひ積極的に人に話してください。

私たちの生活を「記憶」と「学習」から遠ざけている最大の障壁はなんでしょうか。シニア層だけでなく現代人すべてに共通するその障壁は、「学びに必要な時間が足りない」ことです。

現代人はとにかく忙しい。時間マネジメント、別の言い方をすれば「時間の断捨離」が必要です。かくいう私も時間が足りません。英語だけでなくスペイン語や中国語も話してみたい。科学に必要な数学も極めたい。脳科学の論文を読む時間も捻出したい。何を学び、何を捨てるか、集中と選択が大切なのが現代人です。

もう1つ、現代ならではの課題がスマホです。朝起きてから夜寝るまで、私たちは片時も離さずスマホでニュースを読み、SNSで知人の近況をチェックし、仕事のメールをチェックし、ゲームをしています。便利で快適な生活必需品ですが、人生から時間の空白を奪う存在は、学びと記憶にとって強敵です。

私たちの脳は、夜の睡眠時や、日中ボーッとしている時間にこそ、学習します。リラックスしているときによく働く脳部位が「ディフォルト・モード・ネットワーク」で、海馬もその一部です。覚醒時にフル回転していた脳がアイドリング状態に入り、記憶の整理と保存が進みます。何もしない時間は外から見ると無駄に思えますが、「脳を整える」ためには不可欠な時間です。