岸田首相のコロナ対策は息の長い長期的対応なのか

岸田首相は「息の長い、感染症危機への対応体制」と所信表明演説で説明したが、本当に息の長い、長期的な対策なのだろうか。新型コロナウイルスそのものの研究を忘れていないか。ウイルスの研究は長く続けなければ成果は得られない。

新型コロナがいつ、どうやって動物から人に感染するようになったのか。その間どんな変異がどのくらい起きたのか。時間をかけて探ることで、今後発生する変異ウイルス(変異株)を予測できる。新型コロナウイルスに限らず、ほかのウイルスのパンデミック(世界的流行)も予測して防ぐことが可能だ。

新型コロナウイルスの起源はどの国も未だ解明できていない大きな謎である。世界は力を合わせてこの謎に挑むべきで、日本は欧米など世界各国の研究機関と協力しながら研究を進めたい。

武漢ウイルス研究所が2013年に発見した「新型コロナ」

少々専門的な話になる。中国湖北省の武漢ウイルス研究所のチームは、SARS(サーズ、重症急性呼吸器症候群)のコロナウイルスの起源を解明する調査研究を行ってきた。ちなみにこの研究所は一時、新型コロナウイルスの漏洩が疑われ、その名が世界中に知れ渡った。

武漢ウイルス研究所は2013年に雲南省昆明市の通関(トングアン)という町の銅山に生息するコウモリから新型コロナと遺伝情報が96%一致する、コロナウイルス「RaTG13」(Raはコウモリの一種を、TGは地域を、13は2013年を指す)を発見している。この銅山の坑道では、コウモリのフンを清掃していた作業員が重い肺炎を相次いで引き起こし、死者も出ていた。武漢ウイルス研究所は昨年2月、イギリスの科学誌ネイチャーにこのRaTG13を発表して世界の注目を浴びた。

3匹のコウモリ
写真=iStock.com/CraigRJD
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しかしながら、96%の一致と言っても遺伝子的には4%の差は大きく、しかもRaTG13と新型コロナの祖先は40年~70年前に分かれた可能性が高く、RaTG13は新型コロナの起源に直接は結び付かない。この40年~70年の期間に起きた変異を探る必要がある。