中国からの輸入額は30年間で30兆円越え

中国からの輸入額は1990年に3兆1000億円あまりでした。その後、中国が世界の工場と化す間に輸入額が激増していくのですが、リーマンショックで一時的に減少し、その後再び増加して、2019年の輸入額は32兆7000億円まで増えました。

30年間で30兆円増えたのですが、この分だけ日本国内の企業の売り上げは減り、雇用も賃金も影響を受けたのです。もちろん中国に進出して工場を造り、安く輸入するというメリットはあるかもしれませんが、安く輸入するというのがまた問題なのです。

たとえば私が直接見てきた業界のひとつが鋳物産業です。ある企業が中国に進出して工場を造り、鋳物の輸入を始めました。当初は安く輸入できてその企業は利益が増えたのですが、安い輸入品の影響で日本国内の相場全体が下がり、その地域の鋳物産業は沈没してしまいました。目先の利益は増えても、時間がたてば自分の首を絞める結果になってしまったのです。

先ほどあげたスーパーで販売されている日配品の多くも同様でしょう。1990年時点では国産の原材料を使用して製造していた日配品の多くが、今では原材料の大半を中国に頼るようになったものが少なくありません。その分だけ国内の産業が沈没していくのですが、影響を受けたのは中小企業です。輸入されるものは完成品の自動車ではなく、中小企業が取り扱っている原材料だからです。

社会保険料の値上げも企業の利益を圧迫

今回改めて調べてみて、その影響の大きさに驚きました。平均年収は1997年をピークとして減少し、アベノミクス期に上昇に転じたものの、それでも1997年のピーク時よりまだ少ないことは前回の記事で説明しました。そのピーク時の1997年の社会保険料の本人負担額は年間48万3000円でした。その後値上げが繰り返され、2019年には本人負担額が61万5000円まで増えました。

この社会保険料の負担増を加味した手取りベースの平均年収を調べると、ピーク時の1997年は419万円で、2019年は375万円であり、約44万円の減少です。アベノミクス期に平均年収は上昇に転じたとお話ししましたが、上昇幅は小さく、それよりも社会保険料負担の値上げの影響で、手取りベースの平均年収はアベノミクス期もほぼ一貫して下げているのです。これに加えて消費税の増税が2回実施され、1997年当時の消費税5%は2019年に10%まで上がりました。税と社会保険料の負担を合わせた国民負担率の上昇が大きく、家計の可処分所得で言えばもっと下がっているでしょう。

リーマンショックの時に大赤字を出す健保組合が続出して健康保険料を一気に2%とか3%値上げされた経緯があります。社会保険料は企業と本人が半々に負担するため、企業にとっても影響が大きくなり、中小企業の利益を圧迫しました。今、企業の倒産自体は減少していますが、その陰で廃業が増え続けています。一つの理由は後継者がいないということですが、子どもや親族など後継者になれる人たちは、企業努力では解決できない社会保険料の値上げで利益が出ないことを見ているので、継ぎたくないのです。