テレビCMよりメニューチラシの方が費用対効果がいい

そして、地域ごとの特性や消費者志向に合わせるべく、北海道/東日本/東海/関西/西日本・九州の5エリアでそれぞれ異なった商品展開を行っており、合わせてメニューチラシのデザインも変更している。

左が東日本エリア、右が関西エリアのメニューチラシ。地域ごとに最適化されたメニューチラシを作ることで需要喚起につなげている。メニューチラシは2021年10月発行のもの
画像提供=ライドオンエクスプレス
左が東日本エリア、右が関西エリアのメニューチラシ。地域ごとに最適化されたメニューチラシを作ることで需要喚起につなげている。メニューチラシは2021年10月発行のもの

メニューチラシは四半期に一度、シーズナルのキャンペーン商品を投入する時に合わせてデザインを刷新している。配布枚数は、1店舗あたり4万~5万枚だ。その合計は、年間3億枚にのぼる。

だが、全国の各地域に広くあまねく訴求するのであれば、テレビCMを打った方が効率はいいだろう。

それでも銀のさらが、メニューチラシをポスティングし続けるのは「『宅配』というお届けできるエリアが限られたビジネスモデルのため、一軒一軒ピンポイントで告知ができるメニューチラシの方が費用対効果が良いから」だと渋谷さんは説明する。

「実は利用者の1世帯あたりの年間平均注文回数が2.35回というデータがあり、年に数回の注文を獲得するためにテレビCMを打つよりも、定期的にお客様の元へメニューチラシを配布した方がいいわけです。キャンペーンを行うのもお客様との接点を作るためで、ある種地域に根ざしながら、地道にお客様を育てていくような気概を持ってマーケティングに取り組んでいます」

こうして銀のさらは、ポスティングによる紙のメニューチラシを長年配布してきたことで、ブランド認知の向上や購買ニーズを醸成し、宅配寿司業界を牽引するようになったのだ。

2010年からデジタル化推進、6割はWEB経由に

さらに、不動の地位を築くのに大きく寄与したのがデジタル化だ。

今でこそ多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を掲げ、デジタルへのシフトに奔走している。一方で、銀のさらは渋谷さんが入社した2010年ごろから業界に先駆けてDX化を推進してきた。

なぜ早くに、デジタルを使ったマーケティングやプロモーションに目をつけたのか。

「当時、アメリカの宅配ピザ業界が先行して、日本の宅配ビザ業界でもネットを利用した宅配注文システムによるオーダーに力を入れ始めていました。そのとき、『これは早めに手を打っておかないと、取り残されてしまう』と危機感を抱き、宅配ピザ業界をベンチマークするようになりました。今まで紙のメニューチラシやDMをポスティングし、電話で出前の注文を取っていたのを、いきなりデジタルに切り替えるのは難しいので、徐々に浸透させていけるように意識しました」(渋谷さん)

デジタルでのマーケティングに取り組み始めた当初は、電話注文が95%に対してWEB経由での注文はわずか5%ほどだったという。

それが、LINE公式アカウントの運用やメールマガジンによる配信などのマーケティング施策を実行し、知見やノウハウを積み上げてきたことで、現在では全国平均で40:60の割合になった。