幼児期に藤井家がやっていたこと

こうした、子供自身に試行錯誤をさせながら知能を育てる玩具は、欧州では一般的だと藤田さん。

「キュボロはもともと、心身に障害のある子供たちの知育のために1979年にスイスで生まれました。木の手触りを大事にした玩具を繰り返し何年も使うという文化が、欧州にはあります。愛子さまが遊ばれたことで有名になったネフスピールといった積み木もこうした玩具の一つです」

一般的な玩具店ではあまり見かけないが、実は愛知県では15年ほど前から広がりを見せている。

「2005年に愛知県で開催された愛・地球博で、スイス政府が自国を代表する玩具として展示しました。それがきっかけで、キュボロに親しんだ世代が多方面で少しずつ活躍し始めています。16年に全国ジュニア発明展で最高賞を取った野々山瑞紀さんがその代表です」

スイスやロシアでは学校の授業でもキュボロが使われている。
スイスやロシアでは学校の授業でもキュボロが使われている。(写真提供=木のおもちゃカルテット

キュボロの教育的な効果は、科学的にも立証されているそうだ。

「将棋棋士の研究を長年にわたって行っている理化学研究所の脳科学総合研究センターの田中啓治さんの分析によると、キュボロは棋士として活躍するうえで重要な脳の“けつ前部”を活性化させることがわかったそうです。田中さんは17年、キュボロがけつ前部と、直観をつかさどる大脳基底核を活性化させるとコメントしています」

藤井三冠は幼少期から、こうした知育玩具に囲まれて育った。

「私の運営する愛知県の店舗の玩具は、聡太さんのおばあさまが近くにお住まいということもあり、藤井家にはひいきにしていただきました。聡太さんが通っていたふみもと子供将棋教室もおばあさまが見つけたとお聞きしたので、情報感度が高い方なのだと思います。キュボロはスタンダードタイプで4万1800円と決して安くはないのですが、藤井家は3セットお持ちでしたし、それ以外にも欧州製の木製の玩具などで遊んでいたようです」