クラウンは本当に「売れていない」のか?

2020年、クラウンの販売台数は2万2173台で前年比は61.4%と確かに大きく減少している。しかしカムリも1万2085台、同62.9%と苦戦しており、日産やホンダの大型セダンはベスト50にすらランクインしていない。

2020年は、コロナ禍の影響で自動車市場全体も縮小しているのでその影響も大きいだろう。

輸入車セダンと比べると、BMW3シリーズが8505台、メルセデスベンツCクラスが6689台(どちらもワゴンも含む数字)であり、クラウンのほうがはるかに多い。クラウンの販売台数はマツダCX-5やスバル・フォレスターに近い数字であり、中大型セダンとしては圧倒的に多い台数なのである。

このようにクラウンはある程度売れ続けている。しかしなぜ中止論が出てくるのか。私はその理由はクラウン自身にあるのではないとにらんでいる。

2020年1月6日、米国ネバダ州ラスベガスで開催された2020年CESのトヨタプレスカンファレンスで講演するトヨタ自動車の豊田章男社長兼CEO。
写真=AFP/時事通信フォト
2020年1月6日、米国ネバダ州ラスベガスで開催された2020年CESのトヨタプレスカンファレンスで講演するトヨタ自動車の豊田章男社長兼CEO。

厳しい状況が続く大型FR車

クラウン(セダン)は昨年中国での販売が終わったため、日本国内専用車になっている。2万台強というのは、世界全体の販売台数でもある。現在のクラウンは、トヨタの最新プラットフォームのうち、TNGA-Lという、大型FR車向けのものを使っている。このプラットフォームはクラウンのほかにレクサスのLSとLC、そして燃料電池車のMIRAIに使われている。

レクサスLSは、先代まではアメリカではモデルチェンジ直後は3万台以上、モデル末期でも1万5000~2万台売れていた車種で、日本でもセルシオという名で年間1万台以上売っていた(日本でも2007年の先代からレクサスLSとして販売)。

しかし、このLSが2017年にTNGA-Lを用いた新型になってさっぱり売れなくなり、2020年のアメリカでの販売台数は3617台にとどまっている。日本でも1781台しか売れていない。LCもアメリカで1324台、日本で835台と低調だ。

LS/LCの日米以外の販売台数は非常に少ないと考えられる(欧州全体でLSが98台、LCが260台)ので、LS/LC合計で1万台以下だろう。MIRAIも水素で走る燃料電池車ゆえ販売台数はごく限られる。

つまり、TNGA-Lを使用する車はすべて足しても2020年は3万台強程度しか販売できていない。このまま大幅な改善が望めないと考えれば、大型のFR車の生産から撤退を考えてもまったく不思議ではない。