政策立案のできない「世襲議員」が多くなってしまうワケ

「請願」を受ける日本の政治家のほうはどうか。最近では吉川貴盛元農水相が鶏卵生産大手の「アキタフーズ」から不正に現金を受け取った疑いで公判中だ(吉川氏は議員辞職)。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)絡みでも当時、担当の内閣副大臣だった秋元司元衆院議員がIR事業参入を目指していた中国企業から賄賂を受け、実刑判決が出て、控訴している。

一連の政治・選挙制度改革で議員が企業から直接献金を受けることは難しくなっている。親から地盤を引き継いだ地方の自民党王国から出る政治家は、能力があってもなくても、何の苦労もなく当選回数を重ねられるが、都市部で浮動票が多い選挙区で選挙を戦う議員は「地元回りに加え、選挙対策の資金確保に四六時中、奔走していて、政策の立案や議会対策にあてる時間は少なくなってきている」(自民党幹部の公設秘書)という。

特に、「小選挙区制に移行してからはこの傾向が激しくなった」(同)という。同じ政党の複数の候補者が同じ選挙区で複数擁立する中選挙区制度では2割か3割得票すれば当選できたが、小選挙区ではもっと多くの得票が必要となる。

また、企業の政治献金も自民党なら「国民政治協会」を窓口に党に入り、議員個人がその恩恵にあずかることはできない。しかも、その額も2019年には自民党で24億2000万円と1992年の93億8000万円の4分の1程度に減っている。

自由民主党
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政党交付金の支給で、政治献金は力を失った

「選挙に金がかかりすぎる」「金権政治の温床となる」との批判を受けて、95年に政党助成法が成立。税金から各党の政治資金の原資となる「政党交付金」が支給されるようになったためだ。政党交付金は各党の議員数と得票数によって割り振られ、自民党なら年間170億円もの交付金が支給されている。

この資金を一手に握り、配分するのが自民党なら幹事長になる。自らが推す派閥の領袖などが幹事長になれば、その恩恵に浴する可能性は高まる。そうでない議員も、党資金の元締めである「幹事長」に従うことになる。特に盤石な政治基盤を持たない議員ほど、その傾向は強くなる。

かつて「奉加帳」方式で献金額を加盟企業に割り振って献金をしていた経団連も、一連の選挙制度改革やそれに伴う政党交付金の支給によって、政治献金は各企業の自主判断にゆだねることになった。

今でも日本自動車工業会の8040万円(2019年)を筆頭に、団体では日本電機工業会(7700万円)、日本鉄鋼連盟(6000万円)と続き、個別企業ではトヨタ自動車(6440万円)、日立製作所(5000万円)、キヤノン(4000万円)と名を連ねるが、議員各人に行き渡るのはごくわずかだ。政治家個人で唯一できる「集金」の場は、パーティー券の販売など限られた方法だけだ。