2011年11月29日(火)

なぜ日本からS・ジョブズが生まれないのか

非連続的なイノベーションを起こすのが苦手な日本企業

PRESIDENT 2011年12月5日号

著者
加護野 忠男 かごの・ただお
甲南大学特別客員教授

加護野 忠男

甲南大学特別客員教授

1947年、大阪府生まれ。70年、神戸大学経営学部卒業。75年、同大学大学院博士課程修了。79年から80年までハーバード・ビジネス・スクール留学。2011年3月まで神戸大学大学院経営学研究科教授。11年4月から現職。専攻は、経営戦略論、経営組織論。著書に、『日本型経営の復権』『「競争優位」のシステム』などがある。

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甲南大学特別客員教授 加護野忠男=文
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世界中に愛され、惜しまれながら逝った、カリスマ企業家。彼と100年前の自動車王に共通点が多いのは、偶然なのか。2人の経営手法を分析する。

常識外の変化は偉大な個人が起こす

アップルの創業者スティーブ・ジョブズが亡くなった。将来の歴史家は、彼を、今からおよそ100年前に活躍したヘンリー・フォードとならんでアメリカを代表する企業家として位置づけることになるであろう。よく見てみると、2人の間には共通点が多い。

2人はともに世界の人々の生活様式を大きく変えた。事業の始め方もよく似ている。ともにおもちゃ遊びの延長上で事業を始めた。そのおもちゃを、多くの人々にとって実用的な価値をもつ商品として完成したヒット商品を作り出し、人々の生活を一変させてしまった。正確にいうならば、2人は人々の生活を変えるきっかけをつくった。

なぜこのような回りくどい言い方をするのか。2人はともに成功の後、自分のやり方にこだわり挫折しているという点でも共通点がある。実際に人々のライフスタイルを大きく変えたのは彼らの競争相手だったといったほうがよいかもしれない。自動車の本格的な普及を主導したのはGMであり、パソコンの本格的な普及はマイクロソフトとインテルによって主導された。

しかし、2人の企業家がいなかったら、このような変化は起こらなかったにちがいない。競争相手は、2人が生み出したきっかけを、彼ら2人よりもうまく利用したにすぎない。

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