映画「ステキな金縛り」を見た。三谷ワールドにはいつも魅惑・幻惑されるのだが、今回も期待にたがわぬ面白さ。深津絵里さんや西田敏行さん、中井貴一さんが登場する映画を見ていると、映画ファンならそうだろうが、生きていてよかったと思ってしまう(笑)。あまりその内容を明かすのは、映画ファンのルールに抵触するのだが、一つだけ許してもらって……。

西田敏行さんが扮するのは落ち武者の幽霊。その彼が法廷に立って証言するというのがストーリー。しかし、その幽霊、見える者には見えるのだが見えない者には見えないというのがドラマのポイント。どうしてそうなるのか、それによりどのような悲喜劇が巻き起こるかは映画を見てのお楽しみ。

で、今回はわが国小売業の力と課題を取り上げるのだが、その焦点は、「見える者にしか見えない」商人の値打ちにある。

去る10月20日、中内学園リテール科学研究所主催の小売りをテーマにしたシンポジウムが開かれた。シンポのパネラーには、セブン&アイ名誉会長の伊藤雅俊氏、イオン名誉会長の岡田卓也氏、ライフ創業者で現会長の清水信次氏、そして北海道のアークス社長の横山清氏という、いわば流通の神様の四氏が登壇された。

横山氏のご年齢が70代中盤であるのを除けば、あとのお三方はそれよりほぼ10歳年長にあたる80歳代中盤。伊藤氏と岡田氏(それに、故・中内功氏を加えて)は流通革命第一世代の旗手。清水氏と横山氏は流通革命第二世代の旗手となろうか。流通の神様たちの話を聞こうと、500人収容の会場いっぱいの聴衆で埋まった。

テーマは、小売りの産業化。第一世代が活躍し始めたのは、半世紀前の1960年頃、わが国小売業の販売高は約6兆円。小売業に従事する就業者数は355万人であった。それが今や、販売高26兆円、就業者数は800万人に拡大した。

日本経済全体に占める割合も、販売高で(対GDP比)5%強。全就業者に占める就業者数(商店主と家族従業者も含む)は12%になる(そのうち、商店主と家族従業者数は合わせて約100万人)。60年当時の就業者割合が8.5%だったことを考えると、わが国小売業は近代化と共に(あるいは、それにもかかわらず)雇用の安定した受け皿として拡大してきた。