日本が編み出す対策は、世界の羅針盤になる

これらは日本社会が直面する課題の一端だ。国によって体制や社会の仕組みは異なるのですべてが該当するわけではないだろうが、大なり小なり似たような課題、状況が21世紀中に多くの国で起こることは疑いようがない。

もし、われわれに何百年も生きる寿命があるならば、20世紀末頃から日本で深刻化した少子高齢化が少しずつ各国に広がり、やがて地球を覆うまでになる様子を見て取ることができるだろう。

宇宙から見た地球
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日本は「課題先進国」と言われるが、われわれ日本人が悩み、試行錯誤の上に編み出してきた少子高齢社会への対策や、これから経験していく人口減少への対応策は、遅れて経験する各国にとってまさに21世紀以降の世界を歩いていくためのガイドブック、羅針盤の役割を果たすこととなる。

「過去の少子化」が「新たな少子化」を生み出す

ところで、人口減少が始まった後の世界はどこへと向かうのだろうか。

人口減少の原因については、再三説明をしてきたが、突如として始まるものではない。その前段となる少子化が長く続いたからこそ起きる現象だ。多くの国の歴史を振り返れば、少子化は人々の暮らしが豊かになったことの裏返しという側面もある。

少子化というのは、当初はさまざまな要因が重なって進むが、時代を経ると「過去の少子化新たな少子化を生み出すという構造的な問題に変質する。毎年女児の出生数が少なくなっていくと、20〜30年後には「出産可能な年齢の女性数」が少なくなる状況を生み出す。こうなると1人の女性の出生数が多少増えたとしても、社会全体の出生数は減り続けることとなる。すでに日本はこの状況に陥っており、出生数の下落スピードが加速し始めている。人口が減り始めてから慌てて対策をとろうにも有効な手立てはないというのは、こういうことである。

厄介なのは、平均寿命の延びが人口減少を覆い隠し、あたかも人口が増え続けているように見せかけていることだとも先述した。少子化に対する危機感は人々の間で醸成されづらく、その時々の対策を遅らせていく。人口減少がもたらす影響が目に見えるようになって、多くの人がその深刻な未来に気付いたときには“あとの祭り”なのである。