ILMのマネージャーたちと電話面接

1カ月以上経っても、ILMからの反応はなかった。

さすがに我慢できなくなって、もう1回だけ催促してみることにした。どうせダメもとだ。それに何より、デモリールには私の4年間が詰まっている。プロのモデラーになってから、一度たりとも仕事で手を抜いたことはない。誰に見せても恥ずかしくない出来だという自負はあった。

思いが通じたのか、スーパーバイザーの1人が、CG展示会に講師として参加する際に少しだけ時間を作ってくれることになった。

面接場所は、展示会場の入口わきのベンチで、人通りもある。

私はiPadを片手に説明したが、スーパーバイザーはすでにデモリールをチェックしてくれていたようで、ふんふんと軽く相槌あいづちを打ちながら聞いている。面接は10分ほどで終わった。こんな面接で、十分にアピールできたのだろうか。

1週間ほどして、ILMのリクルーターから連絡があり、5名のマネージャーたちと電話面接をすることになった。

対面の面接であれば、実際の画像を見せながら説明することもできるが、電話だとそういうわけにもいかない。面接ではあまりにも緊張していて、何を聞かれ、自分がどう答えたのかもよく覚えていない。自分は大の映画好きで、10歳の時に『シャレード』を観たのが転職のきっかけだとか、とりとめのない話をしたような気はする。1つ覚えているのは、ハードサーフェイスかオーガニックかどちらが得意かと聞かれ、どちらもできると答えたところ、どっちなんだ? と押し問答になったことくらいか。

憧れのILM初出社の日

電話面接から4日後、1通の電子メールが送られてきた。

本文の最初に書かれていたのは、「Welcome to ILM!」。

2013年8月19日から11月29日までの約3カ月間、私はILMで仕事をすることになった。

そして迎えた、ILM初出社の日。

ILMは、プレシディオと呼ばれる旧陸軍基地跡地の一角にある。4棟あるレンガ色のビルは以前あった陸軍病院の廃材を有効活用して造られた。そのため、夜幽霊を見たという噂が絶えない⁉ ILMは4棟のうち2つを占有している。

9時に受付を済ませると、オリエンテーションが始まる。入社関係の書類とともに、ルーカスフィルムのロゴが入ったモレスキンのノート、R2-D2が頭についたレゴのペンなどが配られる。

オリエンテーションのあとは、社内の見学だ。通路には、『ダイ・ハード2』や『E.T.』などで使われた実物のマットペイントが飾られている。2つの建屋をつなぐ空中通路には、『ターミネーター』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で使用された小道具の模型などが置かれており、遠くにはゴールデンゲートブリッジが見渡せる。そう、ここが憧れだったILMなのだ。