筆者が観客として競技会場を訪れた際は、競技会場へのゲート(空港さながらの検問所もあった)より外のエリアで、大会の委託業者関連の業務に携わるアルバイトの姿があった。

例えば、観客向けシャトルバスの運行管理をはじめ、炎天下にさらされるリスクがある駐車場での誘導、さらに関係者と観客が入場前に行う検温作業などだ。なお、必要人数の最適化という面ではどこもおざなりだったようで、どこかしこもヒトが余っているように見受けられた。

通訳で採用されたのに実際は「ゴミ拾い」?

6月中に集められた人員にはアクレディテーションカードが順次交付されたわけだが、無観客開催がカード交付申請締め切りの後に決まったことから、当然のことながら人手が大量に余り、業務内容の変更を迫られるケースが続発した。

今年の夏は梅雨明け以降の暑さが顕著で、五輪期間中の猛暑も予想された。アルバイトの中には、涼しい室内での仕事に応募したはずが、炎天下に晒される「キツい外での仕事」に振り替えられる対象案件も多かったという。仕事の条件が違うからせめて屋内仕事に、と訴えても聞き入れられず、この時点で辞めても「自己都合での辞退」と判断され、泣き寝入りするしかないケースもあった。

匿名を条件に取材に応じた人材派遣会社の担当者は、「外国人向けの通訳案内と聞いて、バイリンガルのスタッフにお願いした仕事では、元請けさんから改めて回ってきた説明は、仕事内容はよく分からないが、ゴミ拾いなどの雑用係となるという返事。われわれとしても五輪を直前に控えた時期に別の仕事に切り替えることはできず、どうしようもなかった」と話す。

そのほか、都内各所で実施される予定だったパブリックビューイングの中止で、そこに投入される予定のアルバイトは解雇された。遠方の会場でまとまった期間、泊まり込みで観客整理に当たる予定だった仕事も全て吹き飛んでいる。「せっかく仕事を紹介したのに、政府判断のドタバタで求職者からの信用を失ってしまった」とこの担当者は嘆く。

筆者が歴代大会を見てきたひとりとして、今回の東京大会のスタッフ運営を振り返ると、全体印象として、ボランティアが従事するような業務にもアルバイトのような格好をした人が割り振られていた。ボランティアが予想以上にたくさん辞退したのか、それとも条件の厳しい仕事には就かせないということだったのか……。