17歳の時に級友との人間関係トラブルで内科を受診した

長女が17歳の頃。高校の級友との人間関係がうまくいかず、勉強にも集中できなくなっていきました。成績もどんどん落ちていき、進路や受験について強いストレスを感じるようになったそうです。食欲は落ち、夜もよく眠れない。イライラや焦りの感情が消えることがない。常にお腹を下している。そのような状態になってしまったので、近所の内科を受診することにしました。内科では睡眠薬と安定剤を処方されていたそうです。

心身の不調が消えることはなかったので、その後も同じ内科に通い続けました。そのおかげもあり大学は何とか合格。相性の悪かった高校の級友とも別れを告げることができ、気分一新、楽しい学生生活を満喫しようと思っていました。

しかし、長女の思いとは裏腹に現実は厳しいものでした。

生服を着た学生たち
写真=iStock.com/urbancow
※写真はイメージです

履修届の作成がうまくできず、授業単位が足りないことが後で判明する。アルバイト先ではお金の計算をよく間違え、お客さんと口論になってしまう。店長や他のアルバイト店員との人間関係もうまくいかず、職場で感情を爆発させてしまい職場にいづらくなる。その結果、アルバイトを次々と変えることになり長続きもしない。

また、友人たちと旅行に行くことになった際、旅行の手配は長女がすることに。観光ルートの下調べや宿泊先を探して予約をする役割になったのですが、それがうまくできなかったそうです。

そのことに長女は大きなショックを受けてしまいました。

友人たちからは「そんなに気にしないで。大丈夫だよ」と励まされましたが、どこか空々しく聞こえてしまい長女の心に響くことはありませんでした。

「自分は何をやってもうまくいかない。なんて駄目な人間なんだろう」

長女はそのような感情を強く抱くようになり、自分を責め続けていったそうです。そんなある日のこと。あまりにも強いストレスを受け続けた長女は、内科の医師から「今のような状態では内科ではなく精神科を受診したほうがよいでしょう」と精神科を受診するよう勧められました。

そのアドバイスに従い長女は精神科を受診。しかし精神科を受診しても長女の状態は悪化の一途をたどりました。

自分に自信を失ってしまった長女は次第に大学へ足が遠のいていきました。そして授業の単位が足りずに留年。それをきっかけに大学は退学しました。退学後、長女の国民年金の保険料は親がまとめて支払うことになったのです。

当時の状況がつかめてきた筆者は、母親に次のようなお話をすることにしました。

「国民年金の加入は20歳からです。もし(長女の症状における)初診日が17歳の頃であれば、国民年金に加入する前に医師の診療を受けているので、そもそも納付要件を問われることはありません。つまり、ご長女様は障害年金の請求をすることができます」
「そうなんですか! それは知りませんでした」

母親は驚きの声を上げました。しかし、すぐに母親の表情は暗くなりました。

「でも、市役所での相談では『請求はできません。駄目です』と言われてしまいました。それでも大丈夫なのでしょうか?」
「そうですね。おそらくですが、お母様がはっきりと『初診は21歳の頃で精神科です』とおっしゃったので、そこから先は詳しくヒアリングをされなかった可能性があります。もし『精神科の前に内科にかかっていた』いうようなお話が出れば、少しは状況が変わっていたかもしれませんね」
「そんなものなんですね。でも、内科を初診としても大丈夫なのでしょうか? 認められるものなのでしょうか?」

その問いについて、筆者は次のような回答をしました。

「実務では内科や耳鼻科などが初診になるケースもしばしば見受けられます。『お腹が痛い。体がだるい』といったことで内科を受診したり、『耳鳴りがする』といったことで耳鼻科を受診したりするのですが、検査の結果、特に体の異常はみられない。ひょっとしたらストレスによるものかもしれないので、念のため心療内科や精神科を受診するように医師に勧められる。その結果、精神科などでうつ病などの診断が下される。このようなケースでは、初診は精神科ではなくその前の内科や耳鼻科になることも多いのです」