コンセプトは悪くない。そこで「日本版FIRE」を考えてみよう

ここまで、アメリカのFIRE理論を辛口な視点で見てきましたが、FIREの基本となる考え方は悪いものではありません。

翻訳書をひもとけば、それ以前の部分として、どん欲なまでのキャリアアップチャレンジ(つまり年収増へのこだわり)と、徹底的なまでの低コストでの生活(つまり節約による貯蓄額の最大化)を指摘しており、これは、高額の資産形成において欠かせない要素です。むしろ、年収増と節約励行のほうにFIREチャレンジの重要なポイントがあります。

そうなると、基本コンセプトを活かしつつ、いくつかの修正をしてみるのが「日本版FIRE」として必要ではないかと考えます。

●「40歳でのリタイア」にこだわる必要はない

例えば、50歳代FIREや60歳でのリタイアを設定する

●一定の範囲で資産の取り崩しを認める

例えば、65歳段階で「老後に2000万円」プラスアルファが残っていればよしとする

●日本の公的年金制度などを再評価する

老後に終身での“定期収入”があることを踏まえた収支計画とする

これだけで、1億円を貯める必要はなくなります。目標が1億円を下回ることで実現性は一気に高まります。

山崎俊輔『日本版FIRE超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
山崎俊輔『日本版FIRE超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

また、「高い目標額を実現し、かつ資産を減らさない」という高いハードルを課すことから解放されれば、むやみに高リスク運用を行う必要もなくなります。これも実現性を高める有効な方法でしょう。

経済的な安定を確保したいのは誰もが描く夢です。そして人より早くリタイアできるならこれほど嬉しいことはありません。日本には日本の制度を使ったFIREがあるはずです。

拙著『日本版FIRE超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、アメリカのFIREの通説をときには否定しつつ、日本で誰でも実行可能な手法として再構築をしてみました。お手にとっていただければ幸いです。

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