中国を「国家的脅威の第1位」と名指しする米国

6月16日にジュネーブで行われた米露首脳会談は、「サイバー安保」と「戦略的安定」に関する2つの対話を開始することで合意し、極度の関係悪化を防ぐことで歩み寄った。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はその2日後、「今後は米中首脳会談の準備を本格化させる」と述べた。

会談に臨むバイデン米大統領(左)とロシアのプーチン大統領(スイス・ジュネーブ)=2021年6月16日
写真=EPA/時事通信フォト
会談に臨むバイデン米大統領(左)とロシアのプーチン大統領(スイス・ジュネーブ)=2021年6月16日

米国側からすれば、「本丸・中国との対決に専念するので、脇役のロシアは後ろで静かにしてくれ」ということだろう。4月に公表された米情報機関の年次報告書は、中国共産党体制が「世界的大国」になることを目指して影響力を拡大しているとし、中国を「米国が直面する国家的脅威」の第1位に挙げた。

とはいえ、大国志向の強いロシアのプーチン大統領が米中の覇権争いを座視するはずがない。プーチン大統領と習近平中国国家主席は6月28日、急遽オンラインで会談し、7月に期限切れとなる中露善隣友好協力条約を5年間延長することで合意。関係強化を申し合わせた。「米対中露」の三国関係は今後、複雑な展開をたどりそうだ。

ロシアの「暴走」を阻止したい

プーチン大統領を「殺し屋」呼ばわりしていた反露のバイデン大統領が4月、米露首脳会談開催をプーチン大統領に呼び掛けたのは、3月以降ロシアがウクライナ国境に10万人以上の大軍を配備し、ロシアからの対米サイバー攻撃が続く中、ロシアの「暴走」を阻止する狙いがあった。

米露首脳は今回、核軍縮を協力して進めることをうたった共同声明を発表。米側は、ロシアが望むサイバー安保の対話開始にも同意した。米国との対等な関係を内外にアピールしたいロシアにとっては望ましい展開だ。

それでも、米国の対露経済制裁や欧米の封じ込め政策は継続される。ロシアにとって、中国に依存する構図は変わらない。

酷評された時代遅れのバイデン発言

米露首脳会談では、「中国」も議題に上った模様だ。バイデン大統領は会談後の会見で、「数千キロメートルの国境を接する中国が、世界で最も強力な経済力と軍事力を持とうとしている。(ロシアは)自国の経済が苦しい中で、厳しく(中国に)対処する必要がある。彼(プーチン)は米国との冷戦など求めないだろう」と語った。

帰国時の機内会見でも、「ロシアは今、非常に厳しい状況に置かれている。中国に圧迫されているのだ」と述べた。

この発言は、「議員活動を始めた1970年代の中ソ対立の記憶が沈殿したままだ」(米国外交評論家レイ・マクガバン氏)、「中露の包括的パートナー関係に関する知識がゼロであることと、明らかな希望的観測が混在している」(『ナショナル・インタレスト』電子版、6月19日付)などと専門家から酷評された。

中国紙『環球時報』(6月18日付)も社説で、「ロシアを圧迫しているのは、中国ではなく米国だ。中露間の信頼は固い政治的な基礎に立脚している」と反発した。