父親が思春期の娘と良い関係を築くにはどうすればいいのか。脳科学・AI研究者の黒川伊保子さんは「相談事を持ちかけてみるといい。相談事は、相手への好奇心と信頼を同時に感じさせることができる」という——。

※本稿は、黒川伊保子『不機嫌のトリセツ』(河出新書)の一部を再編集したものです。

手を後ろで組むシニア男性
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うざい理由「あれこれ聞いてくるから」

2020年、コロナ禍の真っ最中に、『娘のトリセツ』という本を書いた。

「娘の育て方」「娘との付き合い方」は、何年も前から、幾度となくオファーをいただいてはいるものの、私には娘がいないので、書く資格もモチベーションもないとお断りしてきたテーマである。しかし、小学館の編集者の方が、ついに私の心を動かした。

というのも、可愛くてたまらない中学生のお嬢さん(男子2人の後に、10歳も離れて生まれた末娘なのだそう)から、先日、衝撃の事実を言い渡されたと嘆いたから。「友だちの間で、うざいパパ・ランキングをしたら、パパがNo1だった」と言われたという。理由を尋ねたら、「あれこれ聞いてくるから」だったとか。

「そんなに、しつこく聞いた覚えはないんですけど」とうなだれるお父さん、もとい編集者さん。私が「直近、彼女にどんな質問をしました?」と尋ねたら、「スマホのアプリに夢中だったので、それ何? と聞いたくらいでしょうか。無視されたので、それ以上は聞かなかったし。ぜんぜん、しつこくないでしょう?」と、自分には罪がないと言いたげな様子で答えてくれた。

しかし、それがビンゴ! だった。私は、その瞬間、この方のために『娘のトリセツ』を書こうと決心したのである。見事な「うざいパパ」ぶりで、あまりにも無自覚だったから。