女性向け風俗の草分けはドクター荒井

【柾木】この数年の女性向け風俗の動きを改めて振り返ると、2016年の『昼顔』ブームで、不倫で家庭を壊すわけにはいかないから風俗を利用してみたかった、と言うお客さまもいました。ある店舗のオーナーは、2018年に松坂桃李さんが主演した『娼年』の影響で利用者が増えたとも話していました。

ブレードランナー スタイル新宿クロッシング夜
写真=iStock.com/Vu-Minh Nguyen
※写真はイメージです

そもそも女性向け風俗の草分けは、ドクター荒井だと言われています。ドクター荒井は70年代にアメリカで性について学び、日本で初めて性感マッサージ店「すがも美療院」を開設しました。80年代に入り、「トゥナイト」などの深夜番組に取り上げられ、一躍有名になった。女性も性を楽しみ、快感を味わう……。当時としてはセンセーショナルな文脈で爆発的にヒットしましたが、もともとのコンセプトは違いました。性行為がうまくいっていない夫婦へのサポートが目的だったのです。

こうしてスタートした女性向け風俗は、整体師など身体の知識とマッサージのスキルを持つ人たちが、裏メニュー的に行うケースが多かったようです。その頃から、女性向け風俗店で働く男性は、性感マッサージ師、性感師と呼ばれていました。それが、3年前ほどからセラピストという呼称になり、店によってはスタッフ、キャストと呼ぶようになった。

風テラスへ寄せられる相談に男女差はほとんどない

【坂爪】利用する女性にも抵抗感がない呼び名になったわけですね。

件数は少ないですが、風テラスにも男性セラピストから相談が寄せられます。コロナ以前だと、風俗の世界で働く女性から風テラスによせられる相談は月60~80件。一方で、男性セラピストからの相談は年に数件にすぎません。

そこで興味深いのは、相談内容が男性セラピストも、性風俗店で働く女性もほとんど変わらないこと。退店時に店舗側がホームページから写真を削除してくれない、約束の報酬が支払われない、店が決めた理不尽な罰金のルールに困っている、客とトラブルになってしまった……。女性向け風俗でも、一般の男性向け風俗でも、同じような問題が発生し、その世界で働く人たちは似た悩みを抱えているのだな、と気づかされました。