詐欺師はどんな手口で消費者を騙すのか。ルポライターの多田文明さんは「よく使われるのが『対立思考』という方法だ。理想と現実など、物事の見方をはっきり2つにわけることで相手に考える隙を与えない。私も若いころ騙されそうになったことがある」という――。

※本稿は、多田文明『サギ師が使う交渉に絶対負けない悪魔のロジック術』(イースト新書Q)の一部を再編集したものです。

プレゼンテーションを行うビジネスマン
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カルト教団が悪用する「対立思考」

善か悪か、敵か味方か、白黒をはっきりつけて物事を考える方法は、よくカルト教団の思想などで見られる。これは二極思考、対立思考などとも呼ばれる。

実は、有能なビジネスマンはこの手法を取り入れているのだが、「正」の側面に触れる前に、「負」の側面をざっと解説しよう。

現代社会においては、物事が複雑に絡み合っており、仕事や人間関係などで対処すべき方法がわからず、悩みやストレスを抱えてしまう人は多い。

ところが、この思考ではすべての事象を白と黒のふたつに分けて考えさせるので、物事の判断が楽になる。白を取るとすれば、黒の側を排除すれば良いので、どっちつかずの曖昧さのなかで悩むことがなくなる。

それゆえ、現代人のなかには、この思考を自らの心に取り入れることで、思い煩いから解放されたような気持ちになる人もいる。

だが、この考えは一方で危険なものにもなりうる。

たとえば、カルト教団などではこの思考を使い、相手にマインドコントロールをかけてくる。すなわち自らの教団の意向に沿う行為を善行とし、それ以外を悪行と定めて、物事をスパッとふたつに割って判断させる。

となると、必然的に自らの教義に反対する人々は悪魔の側、敵とみなされ、徹底的に排除されることになり、なかには、この世の法律よりも、自らの教義を優先させることで、反社会的な行動を引き起こしてしまうことにもなる。過去に起きた一連のオウム真理教の信者らによる事件などが、その好例であろう。

さて一方、カルト教団同様に社会問題化している悪徳商法を行う人たちはこの思考法をどのように使っているのであろうか。