子供の教育に対する「母親の狂気」を垣間見た瞬間

では、何がエビデンスのある情報なのか。大学受験であれば、予備校などが分析した情報や勉強方法があるが、子供がまだ小さい場合はママ友からの口コミが主要な情報源となることがある。だが、これは要取扱注意だ。

コロナ禍以前の週末、東京・青山にあるイタリアンレストランで仕事の打ち合わせを兼ねてランチをしていた時のこと。筆者のすぐ後ろのテーブル席を占めていたのは、就学前の子供連れのママ友のグループだった。テーブルが近く、グループの中で演説をふるうママの声がどんどん大きくなってくるので、話は丸聞こえだ。

話題は、子どもの教育について。

曰く、子供には小さい頃から、名の通った英会話教室やバレエ、ピアノ、幼児教室に入れるべき。私立のレベルの高い学校に進学させて環境を整えてやるべき。そのためには、時間もお金もかかるが、子供が大事なら、これらを決して惜しんではならない……。

といったことを自信たっぷりに熱く語っていた。

高瀬志帆『二月の勝者 絶対合格の教室』(小学館)
高瀬志帆『二月の勝者 絶対合格の教室』(小学館)

そのママたちの顔を見ることができる位置に座っていた打ち合わせ相手は、「何かが乗り移ったとしか思えない」と苦笑いしていた。それほど、鬼気迫るものだったのだ(後ろの席なので、筆者には見えなかったのが残念で仕方がない)。

中学受験を題材にした人気漫画『二月の勝者 絶対合格の教室』(小学館)の第1話で、カリスマ塾講師が教え子たちに「君達が合格できたのは、父親の『経済力』そして、母親の『狂気』」と言い放つシーンがあったが、まさにそれを彷彿とさせる母の姿だった。