職員数は2万6000人超

マサチューセッツ総合病院(以下MGH)は1811年創立のハーバード大学医学部の最大の基幹病院であり、エーテルによる全身麻酔が発明されたことでも有名である。1000程の病床以外にも医学研究施設を擁し、医療従事者、研究者などを合わせ全職員数は2万6000人を超える。

MGHには、緊急事態に対応するインシデント・コマンド・システムがあり、今回のワクチン接種の計画と実行も他のハーバード関連病院と共同で担当している。

武漢で新規感染症が発生したのを受け2020年1月に直ちに組織され、3~4月にかけて到来した感染の波を正確に予測し、感染病床の確保、集中治療室の拡充、職員の配置換え、PPE(感染症対策のための個人防護具)の確保などを万端に整えていた。

地域の感染患者を一手に引き受けた4月には一時期300人を超える感染入院患者がいたが、医療現場での混乱は比較的少なかった。

2020年12月11日、オンラインで対話集会が開催され、院長はじめ担当チームから接種手順が解説された。折しも、アメリカは第2波が押し寄せ、感染者、死亡者が指数関数的に増えている最中であったため、関心の高さは最高潮に達しており、多数の職員が参加した。

 写真(左):対話集会では、質問があればチャット機能やメールなどで質問することができる(以下、MGH Public Affairの許可を得て掲載)(右)職員を5つのウエーブに分け、順番に接種していく
筆者撮影
写真(左):対話集会では、質問があればチャット機能やメールなどで質問することができる(以下、MGH Public Affairの許可を得て掲載)(右)職員を5つのウエーブに分け、順番に接種していく

ファイザーのmRNAワクチンは超低温で保管(モデルナのワクチンは通常の冷凍庫程度)、一度解凍したら冷蔵で5日、また接種のために薄めたら6時間以内に使用する必要がある。これらの管理基準が守られないと廃棄しなければならなくなるため、ワクチンの購入、輸送、保管、調剤にはこれまでない手間と時間の負荷がかる。計画の立案と実行は大変な労力を要したであろう。

オンライン集会で伝えられた強い決意

対話集会では、ワクチンの研究開発、認可の審査過程の解説があり、安全性についての議論もなされた。秋に行われたインフルエンザの予防接種は職員全員に義務付けられていたが、コロナウイルスワクチンは安全性が完全には証明されていないことから接種は任意とされた。

また、どのように接種順などが決定されたか、接種の進行状況や副反応などを院内メールや対話集会を通して全て透明に共有することが伝えられた。最後に、ワクチンはパンデミックを終わらせる有効おそらく唯一の方法との強い決意が伝えられた。

具体的な手順として、ワクチンを無駄にしないようにきめ細かいスケジュール統制に協力するよう要請があった。

12月16日より全職員を感染リクスに応じて5つのウェーブに分け、救急外来といった最も優先順位の高いウェーブAより段階的に接種した。