「移動コストが下がる技術」に資本が集まっている

その政府関係者は、私たちが事業で手掛けている紙資料やウェブページの動画化を見て、「これだと情報量が多く、わかりやすくなる。動画のほうが圧倒的に知識や経験を伝えられるし、移動コストが下がる」と言いました。

現在の世界の流れは「移動コストが下がる技術」に資本が集まっていることが明確だというのです。とてもわかりやすい観点ではないでしょうか。この観点で捉え直してみると、ドローンや自動運転車、ブロックチェーン、フードデリバリーも同様です。

本当の豊かさは「ストック」ではなく「フロー」

「移動コストが下がる技術」が重要な背景には、「豊かさのためには循環が重要である」という考え方があります。彼が定義した豊かな状態は、単なる所有や利用が積み上がるだけではなく、体験を通じて情報が活発にやり取りされていることだというのです。

お金をたくさん持っているけれど友だちが少ない老人と、お金はそれほどなくとも友だちがたくさんいる老人では、どちらが豊かなのか。明らかに後者だと感じる人が多いのではないでしょうか。

要は、本当の豊かさはストックではなくフローであり、循環性こそが大事なのです。その意味では、GDP(国内総生産)を豊かさの指標にすることは、現代においてズレ始めている可能性があるということです。

たとえば、メルカリでTシャツを買ってから、またメルカリで売ったとします。この売買においては、メルカリに支払う手数料の10%分しかGDPに換算されません。ところが、売った人も、買った人も、豊かさを実感できるはずです。従来のGDPでは、「5,000円のTシャツ」が作られ、販売されたところまでしかみえません。実は、そのTシャツが人から人へ流通する過程の豊かさを評価できないわけです。

景気も、一つの循環度合いといえるはずです。循環性はとても大切な観点であり、だからこそ「移動コストが下がる技術」が豊かさにつながるという論旨は、とても正しいのではないか、という感覚を持っています。