227億ドルの利益を無課税にするグーグル

以下、グーグルとスターバックスの事例を紹介することにしよう。

グーグルは、公開株式企業として登記される2004年8月の前年の2003年、その検索・広告技術をアイルランドに立地する子会社「グーグル・ホールディングス」に売却した(無形資産の低課税国への売却の典型例!)。この子会社は、バミューダに立地する資産管理会社によって管理されているため、アイルランドの税法上はバミューダ法人と規定されている点に特徴がある。

図表1でいえば、真ん中のタックス・ヘイブンに立地する資産保有会社が、バミューダに立地する資産管理会社に相当する。ちなみに、バミューダの法人税率はゼロである。

黄昏時のサウスレイクユニオンエリアのGoogle新社屋(米国シアトル・2019年8月19日)
写真=iStock.com/400tmax
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グーグルは、子会社への技術売却で対価を得たはずだが、その金額はわずかでしかなかった。もし、その金額が大きなものであれば、2003年に巨額の法人税を納めたはずだが、証券取引委員会の2004年の記録によれば、グーグルは全世界で2億4100万ドルの納税しか行っていない。

それ以降、数百億ドルの利益を生み出している技術の価値が当時、わずか7億ドルと評価されていたことを意味する(Saez and Zucman2019)。

実際、わずか1年でバミューダに立地する子会社グーグル・ホールディングスは227億ドルもの利益を上げた。なぜなら、同子会社はグーグルのもっとも価値ある技術の法的な所有者となっていたからだ。

アイルランドのグーグル・ホールディングスは、その特許使用権を欧州中のグーグル子会社に供与している。そしてドイツやフランスに立地するグーグル子会社は毎年、何十億ドルもの特許使用料をグーグル・ホールディングスに支払うことで、ドイツやフランスからアイルランド経由でバミューダに所得を流出させ、租税回避を行っているのだ。

スタバが英国でほとんど税金を納めていない理由

スターバックスは1998年以降、イギリスで事業を展開している。2012年10月にロイターは、その英国現地法人が15年間の事業期間のうち14年間は損失を計上し、イギリスでは法人税をほとんど納めていないことを報じて衝撃が走った。

実際に、2011年10月2日で終わる財政年度において、現地法人は約4億ポンドの売上、7億8540万ポンドの粗利潤、2880万ポンドの営業損失、そして3290万ポンドの税引前営業純損失を計上していたのである。

ところが現地法人は、英国のコーヒー小売市場で31%もの市場占有率を誇り、株主への報告でも英国事業の堅調な収益性を示唆していたのだ。このギャップは一体、どのように理解すればよいのか。

ロイターによれば、スターバックス英国現地法人は、次の3つのグループ企業間取引を通じて莫大な金額をイギリス国外のグループ企業に移転していたという。

それは、(1)オランダ子会社への特許料の支払い、(2)オランダおよびスイス子会社からコーヒー買い付けに対して一定の利幅を上乗せしての支払い、(3)アメリカの親会社からの借入金に対する利払費、である。

このうち、(1)と(2)については、流出先できわめて低い税率でしか課税されない。これら3つのルートを通じてイギリスから資金が外部へ流出する構造となっており、それが14年間にわたって現地法人が損失を出し続けたことの背景理由である(Kleinbard2016)。