35歳で『青べか物語』に出合って以来、山本周五郎の愛読者である。周五郎は文壇と交わらず狷介な人物と評されたが、作中に示される人生観は深い思慮と苦労人らしい思いやりに満ちており、読後の印象はどれも清々しい。

本書は、旧幕時代の女性たちの凛とした生き方を描いた短編集。夫婦や親子、主従関係にある人々が、さあらぬ顔をしながら、実は相手や家庭のために献身的な働きをしていた、という話がほとんど。職場を見回してみても、良い仕事の背後には必ず円満な家庭がある。人生には辛い時期や不運が付き物だが、互いに意を汲み、思いやりを持って困難を乗り越えていくのが夫婦や親子。男女を問わず、若い人に読んでほしい本だ。