食料不足の原因は輸出制限ではない

2020年3月下旬、都内スーパーの食品売り場からパスタやソースが一斉に消えました。報道で海外の都市封鎖を知った消費者が「しばらく買い物が自由にできなくなる」と心配し、日持ちして簡単に調理できる乾麺を競うように買ったことが一因でした。

スーパーマーケットの空の棚。商品の不足、コロナウイルスによる検疫。
写真=iStock.com/Galina Atroshchenko
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20年4月に入ると、今度は小麦粉やバターが商品棚から消えました。こちらは外出自粛やテレワークで在宅時間が増えたことで、パンやお菓子作りを始めた人が増えたことが原因らしいということがわかっています。

各国が食料品の輸出制限をしたからだと考えた人もいたようです。実際、ロシアなど十数カ国が輸出制限をしましたが、制限量は少なく、日本が受けた影響は軽微でした。欠品はあくまで一部消費者の問題だったのです。

とはいえ日本は食料自給率が37%と、主要国では突出して低い国です。今回の品不足こそ輸出制限が引き起こしたものではありませんでしたが、次に同様の問題が生じた際に品不足が起こらないとは限りません。食は生活を支える最も基本的な資源であり、外国への依存度が高すぎるのは問題があります。食料自給率を上げる方策として多くの人が考えるのは、農業や漁業に予算をつけて生産量を増やすことでしょう。しかし、無駄に廃棄される食品を減らすことで食料自給率は上げられます。日本は年間612万トン(2017年度)も“まだ食べられる食品”を捨てている「食品ロス大国」なのですから。