王将には順位賞という制度がある。店舗の売上高の規模によって、直営店を5グループに分類している。そのグループ内で、売上高、利益の前年対比での伸び率、1人当たりの生産性から総合順位を付け、報奨としてキャッシュが手渡される。1位の店には50万円、2位には40万円……といった具合だ。

王将の報奨制度を公認会計士、柴山政行氏はこう分析する。

毎月約1500万円の原資を各店舗へ分配する:順位による報奨金は月によって変動し、過去には1位の店舗へ150万円が手渡されたこともある。「順位賞」の従業員への配分は店長が決める。
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毎月約1500万円の原資を各店舗へ分配する:順位による報奨金は月によって変動し、過去には1位の店舗へ150万円が手渡されたこともある。「順位賞」の従業員への配分は店長が決める。

「仮にいくらかの原資を用意しておいて、毎月、各店舗に同じ額の報奨を渡すとしましょう。一見、分配は公平ですが、そうしたやり方では誰も頑張らない。1位になったら大金が手に入るからこそ、人間は頑張るのです。つまり、不平等な配分が競争心を駆り立てる。それに、この報奨制度にはもうひとついいところがある。それは報奨金を目当てにして、各店舗(報奨は直営店のみ)が必死になって競争する。店には活気が出るし、その結果、売り上げも上がる。仮に各店舗の売り上げが1%でも増えれば全体では大きな金額になる。店舗の活気を重んじる王将らしい制度です」

王将にはほかにもプレゼントがある。従業員の妻の誕生日には花束(3000円相当)を贈るし、従業員には本を渡すこともある。前回は『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』(林總著、ダイヤモンド社)の漫画版が全社員に配られた。

そうした従業員に対する心遣いについて、社長の大東氏は真正面からこう答える。

「結局、飲食業は人なんですよ。気持ちのいい接客をし、安くておいしい料理をスピーディに提供するには従業員が燃えていなくてはならない。従業員が満足して働いていないとお客さんへのサービスもできないんです。そのために僕は従業員を大切にする。報奨や成果の還元だけでなく、僕自らが手本を示して、仕事をしています。

僕はね、リーダーは指導者でなくてはならんと思っている。支配者でも管理者でもいけない。上にいる者が支配者だと従業員は怖がって、意見も言わなくなる。管理者なら『こいつが言っていることだけをやればいい』となる。世の中はそんなに甘いもんじゃない。部下を怒鳴ったり、数字を追求するだけじゃ商売はうまいこといきません。上の者が血のしょんべん垂らして働いてるから、それを見てる従業員も頑張る。商売は人です。僕の目標は王将の仕事を通して人を残すことです」

大東氏は68歳になった今でも毎朝6時半に出社する。いつも本社前の道路を掃除し、それから仕事に取り掛かる。社長室にはあまりいない。昼は店舗を見に行き、厨房に立って餃子を焼くこともある。ライバルと目される日高屋、バーミヤンといったチェーンの餃子やチャーハンも食べ歩く。

「自分のことを社長と思ったことないよ」

それが彼の座右の銘だ。

※すべて雑誌掲載当時