自分を変えると相手も変わる

今年5月、女子プロレスラーの木村花さんが、SNSで匿名の人たちから受けた誹謗中傷を苦に自ら命を絶つという、たいへん痛ましい事件がありました。おそらく、22歳の彼女には、自死以外に苦痛から逃れる方法が見つからなかったのでしょう。そうであったのならそれも仕方のないことだと、周囲は認めてあげるべきです。

弱冠22歳で自死を選択してしまった木村花さん。釈迦の教えなら彼女を救うことができたかもしれない。
弱冠22歳で自死を選択してしまった木村花さん。釈迦の教えなら彼女を救うことができたかもしれない。(AFLO=写真)

一方で、この世の一切は常に変化しているという仏教の考え方からいえば、直面しているつらい現実も決して永遠ではないということになります。状況が変わるまでもう少し待つこともできたのではないかと思うと、残念でなりません。

悩んだときは般若心経がお勧めです。これはお釈迦様が亡くなってから500年ほど後に、大乗仏教を体系化した龍樹の思想をまとめたものだといわれています。ここで説かれているのが「くう」。これこそが人間を理解する基本の思想だと私は思っています。この空を正確に説明するのはいささか難しいのですが、要するに「あらゆるものは存在せず、単なる現象にすぎない」といっているのです。

また、仏教には「三法印」という基本的な教えがあります。これは「諸行無常(万物は常に変化する)」「諸法無我(すべてがつながりあっている)」「涅槃寂静(何ごとにもとらわれない悟りの境地)」という3つの真理のことです。要するに、この世界は常に変化し、すべてがつながっていて単独で存在するものなどない、といっているのです。般若心経にある「色即是空、空即是色」も、これと同じことを表現しています。